パパはパタハラで悩んでる-イクメンパパが会社で受ける嫌がらせとは
「パパ、最近つらいんだ…」
子どもが生まれて、
「育児頑張るぞー!」
と張り切っていたパパ。
でも、そんなパパの気持ちを踏みにじるような嫌がらせが、会社で行われていることがあります。
いわゆる『パタハラ』ですね。
このパタハラの一番大きな問題は、嫌がらせそのものです。
しかし実はもう一つ大きな問題があります。
それは…
なんてことを、ママには言えないことなんです。
男性ってプライドが高くて、弱みを見せたくないって思っていますからね。
そのくせ、態度から察して欲しいとも思っています。
そこで今回は、ママも知っておいた方がいい、イクメンパパが受けているかもしれないパタハラについて紹介していきます。
「最近パパが悩んでいる!」
その理由が、わかるかもしれませんよ。
イクメンパパの悩みの原因:パタハラとは?
「パタハラ」とは、パタニティー・ハラスメントという言葉を略した言葉です。
【パタニティー(Paternity)】
英語で“父性”を意味しています。
【ハラスメント(harassment)】
英語で“嫌がらせ”を意味しています。
つまりパタハラとは、
『子どもを持つ男性に対しての嫌がらせ』
という意味ですね。
具体的には、男性が育児休業などを申請したことで、休業前や後に会社から嫌がらせを受けたりします。
育児休業は「育児・介護休業法」という法律に基づき、育児のための休業を申請できる制度です。
この法律には、次のような条文があります。
事業主は、労働者からの育児休業申出があったときは、当該育児休業申出を拒むことができない。
これは、わかりやすいですね。
そして、次のような条文があります。
事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
しかし職場に、
- 育児休業についての知識がない
- そもそも男性が取得することへの理解がない
のが現状です。
そのため法律違反の意識がなく、
という軽い気持ちから、パパに対して不当な扱いをしている上司や同僚が多いのが現実なんです。
パタハラの原因は昔からの固定概念があるから
古くから、
『女性は結婚したら家庭に入り、子育てをしたり、家を守るもの』
という考え方がありました。
この考えは今でもあります。
つまり次のように考えている人が多いんです。
子育ては、男性の仕事ではなく女性の仕事だ!
最近では、子育ては母親だけではなく、夫婦で行うものという考え方が浸透しつつあります。
しかしながら事業主、つまり会社の経営者の世代は、以前のような固定概念を持っている人が多いです。
そしてトップの固定概念が、会社の性格・方針にもなります。
その結果、会社としてパタハラが生まれやすい環境になってしまうのです。
実際のパタハラの事例
では実際に、パタハラの被害にはどのようなことがあるのでしょうか。
実際のパタハラの実例をご紹介します。
- 育児休業の取得を理由に、降格や希望しない部署への異動が命じられた
- 昇進試験の受験を拒否された
- 「男が育児休業を取るのか」「復職できると思うな」という言葉をいわれた
- 育児休業後、復職したときに社内の必要事項が伝達されなくなった
男性が育児に積極的に参加するということを理解されていない、ということがよくわかる事例ですね。
夫婦で子どもを育てるというのは当たり前のことです。
しかし不当な降格や異動・暴言や仕事に必要なことを伝達してもらえないなどの嫌がらせを受けているパパがいるのです。
パタハラの被害を受けている人は意外と多い
妊婦さんがマタニティハラスメントを受けるという話を聞いたことがあるという人は多いと思います。
ですが、実はパタハラを受けている男性は意外と多いんです。
2014年に行われた調査では、実に11.6%の人がパタハラを受けた経験があるという回答をしています。
■パタニティ・ハラスメント(パタハラ) に 関する調査
「一割だけしかいない」
そう思う方もいるかもしれません。
ですが
『100人のうち10人』
『1000人のうち100人』
と考えてもらえれば、多いなと感じてもらえるのではないでしょうか。
共働きの家庭も増えているので、ママにとってパパの協力は不可欠ですね。
でもイクメンパパの10人に1人は、『協力する』ということを会社に理解してもらえないのです。
パパに
と聞いても、
『なかなかいい返事がもらえない』
という経験をしたことはありませんか?
それはパパが悪いのではなくて、会社に理解してもらえないということもありそうですね。
パタハラで理不尽な対応を受けて裁判を起こしたら勝てるのか
男性の育児休業は法律で認められている権利です。
しかも、育児休業を取得したことを理由に解雇をしたり、不当な異動や減給、暴言やハラスメントといった不当な行為をしてはいけないときちんと法律で定められています。
それでも、現実には不当な扱いをされているパパもいます。
では不当な扱いを受けた場合、裁判をしたら勝つことはできるのでしょうか。
実際にあったパタハラ裁判の事例をご紹介します。
パタハラの裁判例
参考:医療法人稲門会(いわくら病院)事件
https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/08988.html
病院はその男性看護師に対して、
- 就業規則に基づいた職能給の昇給を行わない
- 昇給試験の受給資格がないとし、受験の機会を与えない
という対応をしました。
この対応を不服とした男性看護師は、これらの行為が
『育児介護休業法10条により禁止される不利益取扱に該当する』
として、病院に対して損害賠償請求を行いました。
京都地裁は、昇給試験の機会を与えなかったことだけが不利益にあたるという判決を下しました。
つまり『昇給を行わない』のは、問題ないとしたんですね。
そこで控訴をした結果、大阪高裁にて、昇給を行わなかったことも不当行為に当たるという判決を下しました。
実際のところ、パタハラで裁判をおこして勝てるかどうかは、その時の状況次第です。
まずは都道府県の労働局に相談してみてくださいね。
男性の育児休業についての法律
会社の就業規則などで父親の育児休業についての決まりがないと、育児休業を取ることができないという勘違いをされている方も多いです。
ですが育児休業は、男女ともに育児・介護法という法律で取得することが認められた権利なんです。
■育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
就業規則に『ある・ない』は関係ないんですね。
ただし取得するには、今いる会社で一年以上働いているのが条件です。
また女性と男性では、取得できるタイミングが異なります。
■女性の場合
出産前と出産後
■男性の場合
妻の出産後
正確に言うと女性の場合、出産前後は『産前産後休業』になります。
女性の産休・育休については、別の記事で紹介しているので、チェックしてみてくださいね。
■パート勤務の産休・育休取得について
男性の育児休業はいつからいつまで取れるのか
実は男性も女性も、育児休業の期間に違いはありません。
育児・介護法では、子どもが一歳になるまで休業できることになっています。
もちろん一年丸ごと休業するのではなくて、必要な期間だけでも取得できます。
また子供が生まれてから8週間以内に休業した場合、具体的な理由がなくても、一年以内なら再度育児休業をとることができます。
サラリーマンとしては、一年間ずっと休むのって不安なものです。
パタハラの原因にもなりやすいですしね。
一時的におじいちゃんおばあちゃんに面倒を見てもらって仕事を片付けてから、もう一度育児休業できれば安心ですね。
パパ・ママ育休プラス制度
育児・介護法が改正され、「パパ・ママ育休プラス」という制度も受けることができるようになりました。
「パパ・ママ育休プラス制度」は、両親がともに育児休業をする場合、1歳2か月にまで延長される制度です。
- 1.配偶者が、子が1歳に達するまでに育児休業を取得していること
- 2.子の1歳の誕生日以前に取得を開始すること
- 3.休業できるのは最長1年
- 4.配偶者の育児休業取得以降であること
条件の1~3はわかりやすいですね。
4は少しわかりにくいと思います。
図にすると、次のようになります。
ママより先に育児休業を取得すると、延長できないんですね。
パパ・ママ育休プラス制度は、いろんな休業のパターンで利用することができます。
詳細は、こちらのページを参考にしてみてくださいね。
■両親 で育児休業を取得しましょう!|厚生労働省
男性の育児休暇中も給付金が受け取ることができる
パパが育休を取るとしたら、一番不安になるのが収入面ですね。
実はパパが育児休業を取得した場合も、ママと同様に『育児休業給付金』を受け取ることができます。
金額は今までの給与額の67%です。
ただし休業を始めてから6か月まで。
それ以降は50%になります。
休業間と比べて3割以上減ってしまうのは、ちょっと大変かもと思うかもしれません。
ですが育児休業中は社会保険料の支払いが免除されます。
また給付金は課税対象外なので、税金もかかりません。
そのため、手取り額の8割くらいは給付金でカバーすることができます。
男性の育児休業の取得率
平成29年度の厚生労働省の統計によると、男性の育児休業取得率は5.14%しかありません。
この中には最初から取得するつもりがない人もいますが、
- 職場がとれる雰囲気でない
- 相談したら断られた
など、パタハラに関連した状況も多いようです。
厚生労働省では、2020年までに男性の育児休業取得率を13%にしたいという目標を掲げています。
その一環として、2013年から「イクメン企業アワード」というものが実施されています。
これは、男性が育児に参加しやすいように業務改善を行っている企業に対し、表彰するというものです。
「イクメン企業アワード2018」・「イクボスアワード2018」の受賞企業・受賞者を決定しました|厚生労働省
今後はもっと周知してもらって、男性がパタハラを気にせずに、どんどん育児に参加できるようになってほしいですね。
パタハラを受けないための対策はあるのか
日本というお国柄なのか、
『仕事を休む=甘えている』
と考える人が少なくないように思います。
特に男性の場合は、平日は会社にいるのが当たり前、残業して当たり前という風潮が強いですね。
仕事を長期で休む人には大事な仕事は頼めないとか、ずっと会社で頑張っている人だけを評価するといった傾向もあります。
そのため、パパが会社を抜け出して子供を迎えに行くと、
『あいつ何サボってるんだ?』
という気持になり、パタハラをしてしまう人が多いのではないでしょうか。
そんな状況なので、パタハラを受けないための対策は、周りの人に理解をしてもらうしかないようです
男性の育休を理解してもらう
周りの人に理解してもらおうとしても、言葉ではわかってもらえないことが多いですね。
そういうときは、厚生労働省で発行しているパンプレットなどを利用してみるというのも1つの方法です。
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/index.html#pam-01
こちらのページから厚生労働省で発行しているパンフレットをダウンロードすることができます。
奥さんの妊娠がわかったら、こういったパンフレットを上司の方に見てもらって、少しずつ育児に関する興味や理解を持ってもらえるように努力してみましょう。
各都道府県の労働局に相談する
厚生労働省では、各都道府県別に労働局が儲けられています。
労働局では、パタハラなどの相談にのってもらえる窓口があります。
育児休業を申請して拒否されたときは相談してみましょう。
お住まいの「都道府県名 労働局」(例:東京都 労働局)と検索すると各都道府県の労働局のホームページを探すことができます。
都道府県によって内容が異なることがありますが、「窓口案内」と書かれている場所を探すと相談先の電話番号を見つけることができますよ。
パタハラで理不尽な対応を受けたときはどうすればいいのか
職場でパタハラによって理不尽な対応(異動、暴言、昇給してもらえないなど)を受けたときは、泣き寝入りしないことが大切です。
前の項目でご紹介しましたが、労働局の「雇用環境・均等室」では、ハラスメントによる不当な扱いを受けた場合に相談に乗ってもらうことができます。
また、調停申請などをしてもらうこともできます。裁判で争うよりも時間をかけずに争うことができます。
詳しくは、こちらのページを参考にしてみてください。
労働厚生省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/funso_h2706-1.pdf
ご主人がパタハラで悩んでいたら
もし、ご主人がパタハラで悩んでいたら話を聞いてあげるようにしてください。
不当な異動や昇給が行われない、必要事項を教えてもらえない、暴言を吐かれるといった行為は、すべて法律に違反している行為です。
ご主人の会社のことだから何もできないのではなく、相談する窓口を見つけたり、証拠を残すために書類を作成するなどの協力をすることはできますね。
会社での嫌がらせやいじめは、周りの人が思う以上に本人が傷つき苦しんでいます。
不当なパタハラに負けないように、夫婦で乗り越えるようにしていきましょう。
まとめ
女性の「マタハラ」だけではなく、男性の「パタハラ」で苦しんでいる人もたくさんいます。
育児休業は、男性も取得できる法律で定められた権利です。
ですが、周りの理解が得られずにパタハラを受けているパパもたくさんいます。
パパが育児に協力しようとしても、スムーズにできないという現状があるということをママも理解しておいてほしいと思います。
そして、不当なパタハラの被害を受けたときは泣き寝入りをするのではなく、労働局の「雇用環境・均等室」などに相談してみるようにしてくださいね。