第五回:社会保険の3つの壁-パートの税金

【保存版】パートの税金について・意外と多い収入が減る8つの壁とは:第五回
こんにちは須永朋美です。
前回は、税金の壁についてお伝えしました。
今回は実年収に大きく影響する社会保険の壁です。
社会保険の3つの壁
次の壁は社会保険の加入・離脱の壁です。
社会保険は税金ではありません。
この記事はパートの税金について説明しているので、本来なら取り上げるべきではないかもしれません。
ですがこの記事のテーマである、
「年収をどこまでにしたら、損をしないの?」
に関わるので、取り上げることにしました。
夫が会社員で、会社の社会保険に加入しているとします。
すると妻は夫の社会保険に扶養親族として加入することができます。
この時の妻の負担金はゼロです。
しかし妻の収入や労働時間が一定以上になると、夫の社会保険の扶養から外れてしまいます。
その結果、妻は自分で保険料を支払わないといけないんです。
妻が自分で保険料を支払う場合、年間数十万円の出費増加となるので、家計への影響は大きいですね。
この夫の社会保険から外れる条件が、社会保険加入・離脱の壁です。
この壁は2種類あります。
パート先の社会保険加入の条件を満たすことで、会社の社会保険に加入します。
加入は義務なので、拒否できません。
また同時に二つの社会保険に加入できないので、夫の会社の保険から離脱することになります。
このパターンには、次の二つの壁があります。
妻が夫側の社会保険加入の条件をみたすことができなくなると、その保険から離脱することになります。
妻は勤めている会社の社会保険か、国民健康保険・国民年金に加入しないといけません。
このパターンには、次の壁があります。
まずは労働時間の4分の3の壁から見ていきます。
労働時間の4分の3の壁
実は社会保険加入の条件として最初に挙げるべきなのは、年収ではなくて労働時間です。
1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上
一週間の労働時間と一か月の労働日数が、常時雇用者、つまり正社員の4分の3以上になると、社会保険に入らないといけないんです。
正社員が一日8時間、週5日働くとすると所定労働時間は週40時間。
一か月4週×5日で所定労働日数20日です。
この4分の3なので、パートで週30時間。
一か月に15日以上働くと、社会保険の対象者になってしまうのです!
年収100万円以下で社会保険加入することも・・・
会社によって一日の所定労働時間は変わります。
一日7時間労働という会社も存在していて、この会社の場合、週21時間で社会保険の対象となります。
また地域別の最低賃金は地域差が大きく、時給700円台も少なくありません。
地域別最低賃金の全国一覧
週21時間×4週×12か月×時給750円=75.6万円
となり、100万円以下でも社会保険に入ることになります。
ちなみに所定労働時間とは、会社との労働契約に基づくもので、実際の勤務状況とは別のものです。
パートで入社する時点で、社会保険に加入するかどうか決まっています。
「社会保険に入らないように時間調整をする」という話ではないんですね・・・
できれば面接時に、確認するようにしてみてください。
すでにパートで働いている人は、今後どうなるのか会社に確認してみるといいかもしれませんね。
社会保険加入のメリット
実は社会保険加入は、デメリットだけではないんです。
次のようなメリットがあります。
- 将来もらえる年金が増える
- 支払った保険料は税金の控除対象になる
この他に、夫が失業した場合のリスク分散にもなります!
社会保険は妻だけでなく、子供の保険料も含まれていて、その分は実質無料です。
しかし夫が失業した場合、会社で用意された社会保険(健康保険)から、家族みんなで抜けることになります。
すぐに次の仕事に移れるなら問題ありません。
もしそうでないなら、国民健康保険に加入することになります。
国民健康保険には、扶養という制度はありません。
したがって、全員の保険料を支払わないといけないのです。
国民健康保険料は一人5万円程度。
3人なら15万円の出費です。
国民年金保険は20歳以上が対象で、一人約20万円。
夫婦で40万円にもなってしまいます。
ですが妻が会社の社会保険に入っていれば、子どもと夫を扶養にいれることで大きな負担増にならなくて済むのです。
将来的リスクが大きいと感じている・・・
会社の社会保険加入条件を満たせそう・・・
もしこんな状況なら、もう少し頑張って、加入することを考慮してみるのもいいいかもしれませんね。
年収106万円の壁
次の年収の壁は106万。
社会保険加入の条件は、労働時間の4分の3以上の労働時間・日数でした。
ですがパートの場合、条件を満たすのが難しいケースがあるため、条件緩和が求められていたんです。
そこでできたのが、年収が106万円をこえると、パートで勤めている会社の社会保険に加入できる可能性がある制度。
これでパート社員でも、社会保険の恩恵を受けやすくなったんです。
しかしながら、夫の扶養から外れたくない主婦にとっては、あまり嬉しくない制度ですね。
ちなみに、ここでいう年収は労働時間の4分の3壁と同じように、所定労働時間と所定労働日数などから計算される賃金です。
実際に働いて得た金額ではありません。
106万円の壁とは、「年収106万円になる予定」の時にできる壁なんです。
では106万円の予定の壁について、詳しくみていきます。
1か月の報酬が社会保険加入の条件に
社会保険の加入条件の改正で、社会保険の加入条件に次のようなものが追加されました。
1ヶ月あたりの決まった賃金が88,000円以上であること
賃金の中に賞与、残業代、通勤手当などは含めません。あらかじめ決まっている賃金(所定内賃金)をご確認ください。
年収106万円の壁は、88,000円×12か月で105.6万円になることから来ています。
社会保険の加入には、一か月の賃金だけでなく、次の条件も満たす必要があります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
実際に働いた時間ではなく、契約上の労働時間。 - 1年以上働いていること
雇用期間が一年以上見込まれる場合でも可能。 - 会社の従業員501名以上
500人以下でも社会保険に加入することが労使で合意されていれば可能。
この中で一番のハードルが会社の従業員501名以上という条件。
この人数は社会保険に加入している人の人数です。
つまり加入していないパート社員は、含まれません。
これでは、中小企業だと難しいのではないでしょうか。
500名以下の会社で社会保険に入りたいと思ったら、正社員の労働時間の4分の3以上働くしかないんです。
それとは逆に、社会保険に入りたくない人には、いいかもしれません。
今後パート先を決める際には、従業員数もチェックする必要があるのかもしれませんね。
年収130万円の壁
次の壁は年収130万円です。
年収130万円をこえると、夫の社会保険に加入し続けることができなくなります。
夫の社会保険の扶養から外れる条件
妻や子供が夫の社会保険の扶養になるには、次の条件に合っていなければいけません。
(1)収入要件年間収入130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は、年間収入※180万円未満)かつ
同居の場合 収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満(*)
別居の場合 収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
この条件を満たせないと、夫の社会保険から外れることになります。
気を付けないといけないのが、年間収入130万円という点。
こちらは106万円の壁と異なり、実際に稼いだ金額です。
賞与や残業代、さらに交通費も含まれます。
また去年の金額ではなく、今年の見込み額という点も重要です。
例えば、「3か月で40万円稼いだから、一年だと160万円だろう。」という計算になります。
130万円以内に抑えるために年末に時間調整しても、関係がないのです。
そしてもう一つの重要な条件が、収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満という点です。
夫の年収が200万円の場合、妻の年収が100万円を超えると扶養に入れないのです。
社会保険の扶養に入れる条件は、実際には所属している健康保険組合ごとの規則や判断で変わってきます。
「規定の収入を1か月でもこえるとダメ」という厳しい条件の場合もあれば、「一年間の合計収入が130万円をこえなければいい」という優しい条件の場合もあるようです。
心配な人は、直接確認してもらってくださいね。
扶養から外れても、勤め先の保険に入れない
誤解されがちなのが、
ということです。
夫の扶養から外れる条件と、会社の社会保険に入る条件は全くの別ものです。
労働時間が正社員の4分の3以上か、106万円の壁で説明した条件のどちらかを満たさないと社会保険に加入できません。
満たせない場合は、国民健康保険や国民年金に加入することになります。
年収130万円なら、国民健康保険が年10万から12万円程度。国民年金が20万円程度です。
会社の社会保険に加入した場合でも、保険料がかかり年収を圧迫します。
年収が130万円付近で会社の社会保険に入っていない場合は、夫の扶養から外れないように早めに働き方を調整するようにしてくださいね。