住民税の調整控除とは

【画像】収入

来なくていいのに、毎年やってくる住民税の通知。
今までは内容を見てもわからないから、よく見ていませんでした。

しかし今年は、税のことについて少し勉強したので、見てみたら…

調整控除ってなに?

合計で2,500円控除されています。

【画像】住民税の通知

これ知っていましたか?

私は初めて知ったので、調べてみました。

調整控除とは

住民税の調整控除って、どうして必要なの?

調べてみると…

  1. 人的控除が所得税よりも低い
  2. 同じ年収でも住民税の方が課税対象額が高くなる
  3. だから調整します

ということらしいです。

なぜ「だから調整します」なのかさっぱりわからなかったので、さらに調べてみると「税源移譲」というものが関わっているようです。

「税源移譲」とは「地方にできることは地方に」という考え方から、国の税金(所得税)を減らし地方の税金(住民税)を増やす政策。
納税者の負担を増やすのが目的ではないので、プラスマイナスゼロになるのが理想なんだとか。

方法としては、所得税の税率を上げて住民税の税率を下げることで、これから入ってくる税金を調節するとのこと。
そこで「税源移譲」前後の税率を比較してみました。

平成19年「税源移譲」前後の税率
税源移譲後の所得税・個人住民税の税率より
課税所得
(万円)
改正前と後の税率
所得税住民税合算
~19510% から 5%減少5% から 10%増加15% から 15%
~20010% から 10%10% から 10%20% から 20%
~33010% から 10%10% から 10%20% から 20%
~69520% から 20%10% から 10%30% から 30%
~70020% から 23%増加10% から 10%30% から 33%増加
~90020% から 23%増加13% から 10%減少33% から 33%
~180030% から 33%増加13% から 10%減少33% から 33%
1800~37% から 40%増加13% から 10%減少50% から 50%

195万円以下は「所得税」と「住民税」の税率が逆転していますね。

しかし…

高所得者は住民税が減って、所得税が増えてる!!
言ってることが違う!!

なんなのこれー?

と思っていたら、こんな一文がありました。

税源移譲により、ほとんどの方は、平成19年1月から所得税(国税)が減り、その分6月から住民税(地方税)が増えています。

財務省

ほとんどの方なので、全員ではないんですね…

高所得者は少ないので財源的に気にしなくていい、ということかもしれません。

「税源移譲」した結果、プラスマイナスゼロにならなかった

所得税10%から所得税5%へ
住民税5%から住民税10%へ

前後の税率を合算すると

15% => 15%

だから合計した税金は同じ額のはずです。

しかし実際は同じ額にはならないのです。

課税対象額は、

「所得」-「控除」

で計算されます。

しかし「控除」の一種である「人的控除」の額が、所得税と住民税とで異なっている。
だから課税対象額が「所得税」と「住民税」とで合わなくなります。

税金計算の元になる金額が同じでないのだから、計算結果も同じ額にはならないのです。

例:課税所得が、住民税140万円、所得税120万円の時

【画像】人的控除から来る課税所得の差

改正前:
所得税)120万円 × 10% = 12万円
住民税)140万円 × 5% = 7万円
合計)19万円

改正後:
所得税)120万円 × 5% = 6万円
住民税)140万円 × 10% = 14万円
合計)20万円

【画像】税源移譲により税負担増

ちなみに「課税所得」とは、年収から控除などを差し引いて、最後に税率をかける前に金額です。

【画像】年収・所得・課税所得の関係

人的控除とは?

先ほど出てきた、「人的控除」とは何でしょうか?

「人的控除」とは、自分や家族などのその人がいることによる控除を指します。
「配偶者控除」や「扶養控除」が「人的控除」です。

その他に「物的控除」があり、こちらはお金を支払った事に対する控除です。
例えば「生命保険料控除」などです。

では「人的控除」の金額が「所得税」と「住民税」でどのくらい差があるのでしょうか。
一覧にしてみました。

所得税・住民税の人的控除額と差額
以下万円以下を示す
人的控除自分の所得
(万円)
控除額(万円)
 対象者の条件所得税住民税差額
基礎控除38335
配偶者控除70歳未満
所得38以下
900以下38335
950以下26224
1,000以下13112
70歳以上
所得38以下
900以下483810
950以下32266
1,000以下16133
配偶者特別控除所得85以下900以下38335
950以下26224
1,000以下13112
所得90以下900以下36333
950以下24222
1,000以下12111
所得123以下900以下差額なし
控除額を確認

~95 31
~100 26
~105 21
~110 16
~115 11
~120 6
~123 3
950以下差額なし
控除額を確認

~95 21
~100 18
~105 14
~110 11
~115 8
~120 4
~123 2
1,000以下差額なし
控除額を確認

~95 11
~100 9
~105 7
~110 6
~115 4
~120 2
~123 1
扶養控除一般38335
特定 19歳以上23歳未満634518
老人 70歳以上483810
同居老親584513
障害者控除一般27261
特別障害者403010
同居特別障害者755322
寡婦控除子供なし500以下27261
子供の所得38以下
500以下35305
寡夫控除子供の所得38以下500以下27261
勤労学生控除65以下27261

こうしてみると、かなりの数の人的控除がありますね。

では実際に課税所得がどれくらいズレるのか見てみます。

■20歳の娘と、17歳の息子、年収38万円以下の配偶者がいる場合

所得税の控除額:
 63万円 + 38万円 + 38万円 = 139万円

住民税税の控除額:
 45万円 + 33万円 + 33万円 = 111万円

差額
 139万円 – 111万円 = 28万円

これだけで30万円近く差がでますね。

調整控除の計算方法

調整控除額は課税所得額が200万円をこえるかどうかで、計算方法が変わってきます。

課税所得額が200万円以下の場合

次のどちらかを計算して、金額が少ないほうが調整控除額になります。

  • (a) 人的控除額の差額の5%
  • (b) 課税所得額の5%

■例1:パートで年収120万円、扶養はすべて夫側

(a) 人的控除額の差額:5万円(基礎控除)

(b) 課税所得額:120万円(年収)-65万円(給与控除)-33万円(基礎控除) = 22万円

(a) < (b) なので、調整控除: 5万円(a) × 5% = 2,500円
※都道府県民税 1000円(2%)、市町村民税 1500円


■例2:給与年収220万円、19歳の子ども一人を扶養、社会保険料20万円

(a) 人的控除額の差額:5万円(基礎控除) + 18万円(特定扶養控除) = 23万円

(b) 課税所得額:135.72万円(※1) – 33万円(基礎控除) – 45万円(特定扶養控除) – 20万円(社会保険料) = 37.72万円

(a) < (b) なので、調整控除: 23万円(a) × 5% = 11,500円
※都道府県民税 4,600円(2%)、市町村民税 6,900円

(※1)平成29年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表より

課税所得額が200万円をこえる場合

課税所得額が200万円をこえる場合は、次の両方をみたす金額になります。

  • (a) 人的控除額の差額-課税所得額+200万円 の 5%
  • (b) 最低金額2,500円

■例1:給与年収420万円、独身、社会保険料30万円

人的控除額の差額:5万円

課税所得額:281.68万円(※1) – 33万円(基礎控除) – 30万円(社会保険料) = 218.68万円

(a)の金額:(5万円 – 218.68万円 + 200万円) × 5% = -6840円

2500円に満たないので、(b)の条件より

調整控除: 2,500円
※都道府県民税 1000円(2%)、市町村民税 1500円

まとめ

いかがでしたか?

住民税の調整控除は、税源移譲による住民税の負担増加を軽減するものでした。
次回、住民税の通知を受け取った時に、確認してみてくださいね!

 

 

他にも知りたいことがあったら検索してね!

 

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