給与の未払いに関する相談はどこにすればいい?

給与の未払いは現実に起こっています。
特に残業代を払ってもらえなかったというケースがとても多くあります。
「サービス残業」もある意味では給与分の未払いになりますね。

未払い分の給与については労働者が訴えたことで支払ってもらうことができた人もいます。
その反面、給与の未払いに関する相談先がわからず「泣き寝入り」してしまっている人も多いのではないかと思います。

そこで、給与や残業代を支払ってもらえなかった場合、どこに相談すればいいのか、また、どんな解決方法があるのかご紹介します。

給与未払いの状況

給与の未払いは、実際にどれくらいあるのでしょうか。
調べてみると厚生労働省で調査した結果をみつけることができました。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/dl/chingin-c_h26_02.pdf

上のリンク先のグラフは、過去10年間で割増料金(残業代)を支払っていなかった企業数と、是正により支払いが行われた金額のグラフです。
企業数については、把握できているものだけなので、実際にはもっと多くの企業で残業代を支払っていないと思われます。

金額の多さや未払い対象の労働者の人数にも驚いてしまいますが、このグラフは労働者が申告すれば支払ってもらうことは可能なんだということを裏付けています。

給与の未払いは法律違反

労働者が事業主から不当な扱いを受けることがないように、さまざまな内容が「労働基準法」という法律によって定められています。
たとえば、「従業員に残業をさせる場合は規定の給与に割り増しして賃金を支払わなければならない」などが決められています。

割り増しして給与を支払わなければいけない決まりがあるにもかかわらず、残業代を支払わないということは法律に違反している行為です。
平たくいってしまえば、法を犯している犯罪行為ということです。
もちろん、残業代に限らず定時時間内の給与についても同じです。

給与が未払いになっている原因

お金を払わないという犯罪行為をしているにもかかわらず、なぜ給与の未払いが起こってしまうのでしょうか。その背景には、以下のようなことがあります。

1. 会社の経営不振
2. 事業主と労働者の感情のもつれ
3. 会社側のずさんな給与管理

一つずつ見ていきましょう。

経営不振

もっともわかりやすい理由は、会社の経営状態がよくないことで給与の未払いが発生しているケースです。
会社の経営状態が悪化して資金調達ができなくなってしまい、従業員に給与を支払うことができなくなってしまったいるというケースはめずらしくありません。

経営者の立場からすれば「ない袖は振れない」と開き直る人もいるかもしれません。
ですが、従業員を雇い入れたのは経営者の判断です。
お金がないからといって、従業員に給料を払わなくてもいいという理由にはなりません。

感情のもつれ

経営者と従業員の間の解釈のずれや、感情的な部分で揉め事などがあった場合、給与が未払いになるケースがあります。
たとえば、「時間の指定があり、定時の時間内に終わらなかったためやむなく残業を行って仕上げたにも関わらず、残業をしろとはいっていないといわれた」などの場合です。

他にも「個人的に経営者から恨まれたり、疎まれているなどの理由で、意図的に給与を支払ってもらえなかった」といったケースも感情のもつれが原因になります。

上司に残業の許可を取らずに自己判断で残業を行った場合は、労働者側に非がある可能性もあります。
ですが、経営者の個人的な感情で給与を支払わないというのは、もちろん認められるはずはありませんね。

感情のもつれによる給与の未払いは、問題を解決するときに一番面倒なケースといえるかもしれません。

給与管理がずさん

中には給与管理がずさんなため、残業代や給与金額に誤りがあることに気が付かずに給与の未払いになってしまうことがあります。
この場合は、労働者側がきちんとした証拠(勤務時間や給与明細)を提示して申告すれば、支払ってもらえる可能性が高いです。

まずは、タイムカードと給与明細を照らし合わせて、未払い分を請求してみてください。

給与未払いの解決方法

どんな理由があるにせよ、給与の未払いを泣き寝入りするのはくやしいですよね。
そこで、未払いを解決するためには、どんな方法があるのか、どこに相談すればいいのかについてご紹介します。

事業主と交渉する

労働者側に一番負担がない方法なのは、「事業主と直接交渉する」ことです。
「会社に直接いって支払ってもらえるなら、とっくにやっている!」という人もいるかもしれませんが、お金の交渉はなかなか切り出しづらいので、今まで諦めて何もしなかったという人も多いと思います。

事業主と直接交渉を勧める理由は2つあります。

1つめは、当事者同士が一番状況や経過を把握しているという点です。
2つめは、他の第三者機関に相談する場合は、相手が理解できる内容や証拠をしっかり集める必要があるという点です。

会社内部の事情をわからない人に動いてもらうとなれば、状況を細かく説明しなくてはいけないですし、それを裏付ける証拠がなければ話を進めるのは難しいです。

今まで一度も会社に交渉したことがない人は、可能であればまずは事業主に直接交渉することを検討してみましょう。

労働基準監督署に相談する

事業主と直接交渉をしてみた結果、「聞く耳を持ってもらえなかった」「話し合いが決裂してしまった」「交渉できる状況がない」という人は、管轄の労働基準監督署に相談してみましょう。

「労働基準法」という法律があることは知っているし気になって条文を読んでみたけど、言葉が回りくどくて何が書いてあるのかわからないという人は多いと思います。
また、法律の知識のない人が、法律をもとに給与未払い分の回収を進めようとしても、何をどうしたらいいのか実際のところよくわからないことも多いですね。

労働基準監督署は、労働基準法のプロです。労働基準法のプロに相談ですることで、法律に沿って今後自分がどんな対応すればいいのか、またどんな手続きが必要なのかについて適切なアドバイスをしてもらうことができます。
相談はメールなどで行うことも可能で、匿名での相談をすることができます。

労働基準関連情報メール窓口

悪質だと判断されたときは解決のために動いてくれることも!

相談内容が悪質だと判断された場合は、労働基準監督署が「調査」、「是正勧告(ぜせいかんこく)」、「逮捕」といった行動を取ってもらえることもあります。
(※是正勧告とは、労働基準法に違反をしている部分を正す措置を取るように促すことです。)

最後の「逮捕」というのをみて、警察じゃないのに労働基準監督署がなぜ「逮捕」ができるのか疑問に思いますよね。
全国の労働基準監督署の中に、「労働基準監督官」と呼ばれる専門の職員が在籍しています。

労働基準監督官には、「臨検監督(りんけんかんとく)」と「司法警察官」という権限が与えられています。

「臨検監督」は、労働基準法違反が疑われた場合、裁判所の許可がなくても違反が疑われる会社に直接立ち入って調査することができます。

「司法警察官」は、労働基準法違反をしている会社について通常の警察官と同じように「強制調査」や「逮捕」ができるのです。
内容をみると、かなり強い権限があるということがわかりますよね。

ただし、労働基準監督署に相談するのではなく、このような対応を望む場合は「申告」をする必要があります。申告とは、会社が労働基準法違反をしている事実を告発するということです。

すべての案件について対応してもらえるわけではない?

これだけ権限を持った人がいるんだったら、労働基準監督署に相談すればなんとかしてもらえるかも?と思った人も多いかもしれません。

実は、労働基準監督署と労働局には年間で100万件もの相談が寄せられています。それに対して、労働基準監督官は全国でおよそ3,000人しかいません。

労働基準監督署で担当できる件数には限りがあるため、「悪質」だと認められた場合はすぐに動いてもらえる可能性がありますが、他の相談内容のほうが悪質だった場合や、労働基準法違反にあたることが認められない場合は、「情報提供」として扱われてしまい、すぐに対応をしてもらえないこともあります。

簡易裁判所に申し立てをする

事業主と交渉ができない、または決裂してしまったという場合は簡易裁判所に申し立てるという方法があります。

民事調停

個人では対等に話し合いができない場合、裁判所で話し合いによって解決する方法が民事調停です。
双方で合意に至った場合は、内容が調停調書に記載されます。こちらに記載された内容は、裁判の判決結果と同様の効力があります。

少額訴訟

相手への要求金額が60万円に満たない場合は少額訴訟がおすすめです。
審理は原則として1回きりなので時間をかけずに判決が出ますし、裁判に必要な費用も裁判所が相手の人に呼び出しに必要な書面を郵便で送る際に使われる切手代、印紙代程度で済ませることができます。

民事訴訟

要求金額が140万以上の場合は、民事訴訟になります。こちらは、判決により解決を図ります。
判決や和解で決まった内容に相手が従わない場合は、財産を差し押さえるなどの強制執行の申し立てをすることもできます。

弁護士・司法書士に依頼する

上記のような手続きを取る場合、実は弁護士などに依頼をしなくても個人で行うことができます。
とはいっても、何をどうしたらいいかよくわからないという人も多いと思います。
そういう場合は、弁護士や司法書士に依頼するという方法があります。

弁護士と司法書士の違い

弁護士と司法書士の違いは、業務範囲に制限があるか、ないかという点です。
弁護士の場合は、すべての業務に携わることが可能ですが、司法書士の場合は相手に対する要求金額が140万円以上の案件には携わることができません。

また、依頼内容にもよりますが、弁護士と司法書士に依頼するときに必要な費用が異なる場合も多いです。
どちらにしても弁護士や司法書士に依頼する場合は、費用がかかります。初回の相談は無料で行っているところが多いので、内容を相談し、費用など確認して、納得してから依頼するようにしてください。

担当者によっては相談しても解決が難しいケースも?

弁護士や司法書士に依頼する場合、担当者によってはスムーズな解決が難しいケースもあります。
弁護士資格や司法書士の資格を持っていても、人によって得意分野、苦手な分野というのがあるんですね。
給与の未払いが得意で何度か解決の経験がある人であればスムーズな対応が期待できるのですが、苦手な人にあたってしまうと、なかなか話が進まないケースもあります。

弁護士や司法書士を探す場合、ホームページなどをみると、得意な案件などが記載されていることがあります。
こういった内容を参考にして、最適な弁護士や司法書士を見つけてみるといいですよ。

給与未払い問題を相談するときに必要なものとは

自分で交渉する場合であっても、第三者に依頼する場合であっても、未払い分をしっかり請求するためには「支払われていない証拠」を提示することが大切です。
証拠品として以下のものを集めてみてください。

1. タイムカード(原本は難しいと思うのでコピーをしておく)
2. 給与明細書
3. 就業規則(会社によってはweb上で社員が確認できるようになっている場合もあるので、印刷しておくといいですよ)
4. 雇用契約書
5. 労働契約を結んだときに提出書類(コピー)
6. 日報の控え
7. 勤務外に送ったメールの送信履歴がわかるもの

これらのものが証拠として有効になります。
できるだけたくさんの証拠を集めることができれば自分が有利になります。

相談したくても証拠がない!そんなときはどうする!?

会社には、上記の書類の原本が必ずあります。可能であれば会社に対して上記の書類の開示請求を行いましょう。
ですが、給料を未払いにするような会社なので、依頼をしても拒否される可能性もありますね。
そのようなケースのときは、弁護士を依頼し、代理請求をしてもらうことも可能です。
それでも拒否される場合は、裁判官が会社に赴いて証拠を確保する「証拠保全」という措置を取ってもらうこともできます。

タイムカードは、勤務時間を証明するためには大切な証拠になります。
これに給与明細があればかなり有利になるのですが、どちらもない場合はかなり不利になります。

弁護士は依頼できない、会社にも依頼できない場合は、自分で書いている日記、会社と連絡を取り合ったメールの履歴など、証拠になりそうなものをできるだけ集めるようにしてみてください。

大切なのはあきらめないこと

給与未払い問題で大切なのは、「泣き寝入りしない」「あきらめない」ことです。
いきなり弁護士に依頼したり、自分で裁判所に行ったりするのはちょっと敷居が高いですが、労働基準監督署であればメールや電話で相談することができます。

悪質だと判断されれば、労働基準監督署に調査をしてもらうこともできます。
証拠がないと諦める前に、可能な限りの証拠を集めてまずは労働基準監督署に相談してみましょう。

まとめ

給与の未払いは犯罪です。それにもかかわらず多くの未払いがいまだ発生している理由は、未払い請求をすることができず、泣く泣くあきらめてしまっている人が多い証拠といえるのかもしれません。

裁判所に申し立てをしたり、弁護士などを依頼する場合は、費用もかかりますし、わからないことも多いのでちゅうちょしてしまう人も多いと思います。
ですが、簡易裁判所の手続きは裁判所のホームページにも記載がありますし、裁判所の人に記入の仕方を聞くこともできます。

金額が大きく、悪質な場合は、労働基準監督署に申告すれば回収ができる見込みも高いです。

最悪の場合は、未払い分を諦めてさっさと見切りをつけて転職をするという選択肢もありますが、この記事を参考に自分にできることから始めてみてください。

 

 

 

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