「給与所得控除」とは-パートでも知っておきたい「年収」と「所得」との関連

【画像】年収と所得

「給与所得控除」と「年収」と「所得」。
これらの関係を知っていますか?

配偶者控除の条件にも関係しているので、パートで扶養内で働きたいと思っている人は、一応知っておいた方がいいかもしれません。

そこで今回は

  • 『年収』と『所得』の違いは?
  • 『給与所得控除』ってなに?

ということを中心に紹介していきますね!

『年収』と『所得』と『給与所得控除』と『源泉徴収票』

【画像】源泉徴収票

パート社員やサラリーマンなどの、会社からお給料をもらっている人は、年度の終わりや退職時に源泉徴収票というものを配布されます。
この源泉徴収票は、一年間にもらったお給料や差し引かれた税金などを記入したものです。

この中の①支払金が、年収です。
②給与所得控除後の金額が所得。
①支払金から②給与所得控除後の金額を引いたものが、給与所得控除になります。

いつも見ないで捨てちゃってるよ・・・という人は、次回もらったときに確認してみてくださいね。

では次の項目から、『年収』『所得』『給与所得控除』について、少し詳しく紹介していきます。

補足

ちなみに③所得控除の額の合計額は、扶養控除などの合計金額。
④源泉徴収額が、所得税の税額です。
そして②給与所得控除後の金額から④源泉徴収額を引いた金額が、手元に残った金額です。

『年収』と『所得』

税金について考える時に「所得」という言葉が頻繁に出てきます。
たとえば所得が38万円以下なら所得税が非課税などです。

しかし、

年収38万円をこえると税金を払うんですね

と、「年収」と「所得」の違いを把握していない人も多いようです。

まずは簡単に「所得」について説明します。

パートの通帳を見る女性

所得とは

所得とは、お仕事をして純粋にもうかった金額です。

どういうことかというと・・・
自分でものを売って商売をしているケースを考えてみると、分かりやすいかもしれません。

このケースの場合、一年間にものを売って得た売り上げが『年収』です。
しかし材料などを仕入れているので、年収イコール純粋にもうかった金額ではありません。
さらに、お店の家賃や電気代・車の燃料代なども支払っているかもしれません。

純粋にもうかった金額は、年収から、仕事をするのに必要な金額、つまり必要経費を引いた後の金額になるんです。

【画像】収入と経費

そして、その金額が『所得』です。

『所得』 = 『年収』 – 『経費』

また、所得にはいくつか種類があります。

  • 個人事業や法人などの事業所得
  • 不動産の賃貸などの不動産所得
  • 株などの譲渡所得

この他にもいろいろあります。
パート従業員など会社勤めの人は、『給与所得』です。

補足1:所得が基礎控除額以下なら非課税

先ほどの質問・・・

年収38万円をこえると税金を払うんですね

について、簡単に説明しますね。

税金計算する時に、必ず除外(控除)できる金額があります。
それは『基礎控除』と呼ばれるものです。

もし所得から基礎控除を差し引いた時に、金額がゼロ円以下になったら・・・
その金額に何をかけてゼロ円です。
だから、税額もゼロ円になります。
(※マイナスにはなりません)

そのため所得が『所得税の基礎控除額』である38万円以下なら所得税が非課税(ゼロ円)。
『住民税の基礎控除』である33万円以下なら住民税が非課税(ゼロ円)になるんです。

【画像】所得が基礎控除以下なら非課税

補足2:合計所得とは

所得には、給与所得や事業所得など、いろいろな種類があります。
そのため税金を計算する時の所得金額は、これらすべての合計になります。
そして合計したものを『合計所得』と呼びます。

給与のみの場合は

『所得』=『給与所得』=『合計所得』

と考えておけば大丈夫です。

補足3:総所得とは

所得には『合計所得』の他に『総所得』というものがあります。

個人事業や株など損失が出た場合、その分を翌年に繰越控除することができます。
前年20万円赤字だったら、今年の年収から20万円引くことができるので、その分税金が低くなるんです。

この繰り越しを考慮したのが『総所得』です。
『合計所得』は繰り越し分を考慮しません。

給与所得のみの人は損失がないので、『合計所得』= 『総所得』となります。

ちなみに株の赤字を繰り越すには、確定申告が必要です。
さらに繰越控除対象は株の所得である、譲渡所得のみです。
給与所得を減らして、税金を安くすることはできないんです。

『給与所得控除』と『年収』

【画像】給与

所得は『年収』-『経費』で計算されるって、先ほど書きました。

ですがパートやサラリーマンをしていて、

あなた、今年、経費をいくら使いましたか?

と聞かれたことは、ないですよね・・・

やろうと思っても、会社が一人一人確認するのは大変です。
それに、全国の給与所得者全員をチェックしないといけないとなると、税務署はもっと大変です。

そこでお役所は、

給与をもらっている人は全員一律で差し引いてしまおう

と考えました。

それが『給与所得控除』なんです。

給与所得者の『所得』 = 『年収』 – 『給与所得控除』

『給与所得控除』と『所得控除』の違い

【画像】計算方法

控除には『扶養控除』や『配偶者控除』などの『所得控除』がありますが、『給与所得控除』とは、扱い方が異なります。

『給与所得控除』はパートやサラリーマンなどの給与所得者が、『所得』を算出するために使用するもの。
他の納税者の『経費』にあたるものです。

『所得控除』は『課税対象金額』を算出する時に『所得』から差し引けるもの。
給与所得者だけでなく、全ての納税者が一定の条件を満たせば使えるものです。

所得を計算するのに使われるのは、給与所得控除なので混乱しないようにしてくださいね。

【画像】給与所得者の所得と控除

給与所得控除後の金額はいくら

「給与所得控除」は一般的に65万円と言われています。
これは間違いではありませんが・・・

65万円なのは年収161.9万円までなんです。
それ以降は金額が変わるので、「給与所得控除」を知りたい場合は計算しないといけません。

ちなみに年収65万円までは、控除後の所得がゼロ円になるので、控除額はその年収額。
年収161.9万円までは65万円。
それ以降は右肩上がりに増えていきます。

【画像】給与所得控除の増加グラフ

とはいえパートの収入の範囲で161.9万円をこえるのはむずかしいので、65万円と覚えていても問題ないのかもしれませんね。

給与所得控除速算表を見る

給与所得控除後の金額は、国税庁が用意している「給与所得控除後の給与等の金額の表」を見ると簡単にわかります。

この表は「控除した後の金額」です。
控除額ではないので注意してくださいね。

29年分となっていますが、30年度の給与所得控除額に変更がないので、このまま使用しても問題ありません。

この表は所得税法の「別表第五 年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表(第二十八条、第百九十条関係)」が元になっているので、そちらを見てもいいかもしれませんね。

【画像】別表第五 年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表(第二十八条、第百九十条関係)
所得税法はこちら

給与所得控除後の給与等の金額の表の見方

  1. 表から年収と同じ範囲の金額を探します。
    例:年収162万1千円なら、1,620,000円以上1,622,000円未満の欄
  2. その欄の右側の金額が給与所得控除後の金額になります
    例:年収162万1千円なら、970,000円

【画像】給与所得控除後の給与等の金額の表(例)

ただし年収が651,000円未満の場合は、給与所得控除後の金額は0円。

年収が65万1千円から161万9千円未満の場合は、年収から65万円を引いた金額になります。
給与所得控除額が65万円だと言われているのは、この金額から来ているのです。

【画像】給与所得控除後の給与等の金額の表(拡大)

給与所得控除金額計算ツール

『給与所得控除後の給与等の金額の表』をもとにして、給与所得控除の金額を計算するツールを作成してみました。
参考にしてみてください。

年収:

年収: 
給与所得控除: 
給与所得控除の金額: 


※免責事項
表と同じ結果が出ることを確認していますが、正しくない値を表示しないことをお約束するものでありません。
給与所得控除に関する金額を申告書等で使用する時は、『給与所得控除後の給与等の金額の表』を参照するようにしてください。

給与所得控除額はいちおう計算式もある

所得税法では給与所得控除額の計算式が決められていてます。
しかし第二十八条の4項で、「計算した結果よりも、別表第五を見なさい」と書かれています。
別表第五とは、給与所得控除速算表のことですね・・・

そのため計算式を掲載してもあまり意味がありませんが、計算式を知りたいという人もいるかもしれないので、掲載しておきます。

年収計算方法
180万円以下65万円(最高年収の40%まで)
180万円をこえて360万円以下(年収-180万円)*0.3+72万円
または
年収*0.3+18万円
360万円をこえて660万以下(年収-360万円)*0.2+126万円
または
年収*0.2+54万円
360万円をこえて660万以下(年収-360万円)*0.2+126万円
または
年収*0.2+54万円
660万円をこえて1,000万以下(年収-660万円)*0.1+186万円
または
年収*0.1+120万円
1,000万円をこえる220万円

最初の計算式は法令に則ったものです。
または以降の計算式は、簡略化したものです。

給与所得控除が関係する申告書は?

【画像】請求書提出

ここまで給与所得控除について紹介してきました。
ですが、

関係ないよね~?

という人も多いのでは?

そこで、パート社員やサラリーマンが使う可能性があって、給与所得控除が関係するものをピックアップしてみました。

扶養控除申告書

【画像】扶養控除申告書(扶)

扶養親族や配偶者の所得見積もり額を計算するときに、給与所得控除を使用します。

【画像】扶養控除申告書 所得見積もり

扶養控除申告書については、こちらの記事をチェックしてみてください。

配偶者控除等申告書

【画像】給与所得者の配偶者控除等申告書

配偶者控除等申告書には自分や配偶者の所得見積もりを記入します。
所得見積もりの計算は『給与所得控除後の給与等の金額の表』を使ってもいいのですが、用紙の裏面に今まで紹介した計算方法とは別の方法が記載されているので、そちらを使った方がいいかもしれません。
どちらでも金額はあまり変わりません

言っていることが適当ですが、そもそも最後の給与をもらう前に提出しないといけないので正確な金額を求めるのは不可能です。
あくまで見積額なので、予想金額を書きましょう。

【画像】給与所得者の配偶者控除等申告書 裏面

ちなみに平成29年以前は配偶者特別控除と保険料控除が一緒の用紙でした。
しかし平成30年からは各々別の用紙に別れました。

また以前は扶養控除申告書を提出することで配偶者控除を受けることができましたが、平成30年からは配偶者控除等申告書を提出する必要があります。
会社の担当者もよく分かっていないケースが多いので、混乱しないようにしてくださいね。

平成32年から給与所得控除が見直しされる

平成29年末に与党から平成30年度税制改正大綱が公表されました。

これによると平成32年から給与所得控除額が一律10万円引き下げられます。

給与所得控除額が減るということは、所得が増えてその分税金が増えます。

増税か!

と怒りが爆発しそうですが、実は基礎控除が10万円増えています。

10万円減って10万円増えているので、増税にはなっていません。

安心しました

配偶者控除や扶養控除の適用条件も10万円上がっているので、31年以前の状況と変わりません。

例:年収が100万円の場合

所得:35万円  45万円
配偶者控除:38万円以下  48万円以下

※改正後の変わらずに、配偶者控除を受けることができます。

ただし!

高所得者には増税になっています。

給与所得控除額の上限は年収が1000万円の時、220万円でした。
それが平成32年以降は850万円をこえた時点で195万円になります。

さらに基礎控除も所得が増えるごとに減額されます。

基礎控除見直し
所:所得税 住:住民税
合計所得基礎控除
31年以前32年以降
2400万円以下所:38万円 住:33万円所:48万円 住:43万円
2400万円をこえて2,450万円以下所:32万円 住:29万円
2450万円をこえて2,500万円以下所:16万円 住:15万円
2500万円をこえる所:なし 住:なし

なんと合計所得が2500万円をこえたら基礎控除なし!

一般庶民の私たちには縁がない世界なので、影響が大きいのか少ないのか分かりません。
正直、羨ましいですね・・・

まとめ

いかがでしょうか?

「所得」は「年収」から「給与所得控除」を差し引いた金額です。
配偶者控除や扶養控除の申請書にも「所得」を記入するので、覚えていてくださいね。

 

 

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