パートと残業代について
「パートだと残業代って出ないの?」
「せっかく働いても残業代がでないと損だよね」
と思ってませんか?
実はパートでも残業代は支払われます。
でも、正社員とパートでは残業代についての考え方が違っていて、もらえる金額も差があるんです。
そこで今回は、
・パートで働いている人の『残業代』はどのように計算されるのか?
・『残業代』を支払ってもらえない場合は、どのような対応ができるのか?
についてご紹介します。
パートの残業代と正社員の時間外労働は、言葉の意味と支払われる金額が違うので、違いもしっかり覚えておいてくださいね。
パートの場合のシフト外勤務と時間外労働の違い
パートの場合の残業代と正社員の残業代は意味と金額が異なるというお話をしましたが、この違いについて具体的にご紹介します。
パートのシフト外勤務の報酬について
パートで働くママの場合、『残業代』といっているものは、シフトをこえて仕事をしたときに支払われる金額のことを指していますね。
シフトをこえて働くことを『シフト外勤務』といいます。
それとは別に、決められた時間をこえて働くことを『時間外労働』とよぶことがあります。
実はこの二つは、別のことをさしていて、報酬にも違いがあるんです。
1日の勤務時間を8時間勤務として、週に5日(週休2日制)勤務すると、1週間の勤務時間は、40時間になります。
この40時間のことを法廷労働時間といい、基準となっています。
この基準を超えた分の労働時間のことを『時間外労働』といいます。
これは正社員・パートどちらにも適用されます。
パートさんで働く場合は、1日の勤務時間は8時間未満または、1週間の勤務日数が5日以下で働いている人がほとんどだと思います。
通常に勤務をしている場合は、1週間の勤務時間が40時間を超えてしまうことはほとんどないということになりますね。
つまりパートさんの場合は、『シフト外勤務』だとしても、法廷労働時間をこえなければ、『時間外労働』にはならないということなんです。
また『時間外労働』と『シフト外勤務』には、報酬に違いがあります。
『時間外労働』の報酬は、基本給に対して25%以上の金額を割り増しして支払わなければならないということが、労働基準法で定められています。
それに対して『シフト外勤務』の場合は、割り増しがありません。
働いた分のお給料はもらえますが、余分にはもらえないんですね。
パートさんの残業代は通常勤務にシフト外超過分がプラスされて支払われている
あなたは、自分の給与明細をじっくり見たことがありますか?
手当などが細かく記載されているので何の金額なのかわからないけど、とりあえず手取りの金額はいくらなんだなっていう見方をしている人も多いと思います。
私が勤務していたとき、パートスタッフの給与明細のデータ入力をして経理に送り、給与支払いの処理をしてもらっていました。
残業代の支払い方法をわかりやすくするために、その時のことを例としてご紹介しますね。
スタッフAさんのシフト時間は、朝9時から14時までです。
残業がなければ勤務時間は、5時間になります。
でも、仕事が多くて15時まで残業をしてもらいました。
そのため、勤務時間は6時間になりました。
その月の勤務日数は15日。
同じように1時間残業してもらったことが全部で5回ありました。
Aさんの時給は1,000円です。
この場合、Aさんの1か月の勤務時間は、
5時間×15日=75時間(シフト内勤務)
1時間×5日=5時間(シフト外勤務)
になります。
これが給与明細ではどのように表示されるかというと、通常業務の項目に勤務時間80時間という形で表示されるんです。
時給が1,000円で勤務時間が80時間なので、給与額は80,000円ということですね。
つまりパートさんの場合、残業代として5,000円(5時間)を計上するのではなく、シフト内の時間数に残業した時間を足した時間数を通常業務の給与として記載していました。
会社によって異なりますが、一般的にはまとめて記載されることが多いようです。
残業代もらってないかも?という場合は、まず、合計された時間で給与明細に記載されていないか確認してみてくださいね。
正社員の時間外労働とは
正社員の時間外労働は、法廷労働時間の40時間を超えて勤務をした場合、通常の給与に25%以上の割り増しをして報酬支払わなければならないという決まりがあります。
この場合、法廷労働時間内と残業分の単価が異なるため、時間外労働という項目に残業代が記載されていることがあります。
パートの場合は、割り増しがないため、シフト外勤務をした場合も通常の業務内に金額が記載されていることがあるのは、このような違いがあるためです。
時間外労働の欄に何も記載されていない=残業代が支払われていないとは限らないので注意してくださいね。
労働基準法における時間外労働の定義とは
労働基準法においては、労働者の区分として正規労働者、非正規労働者という言葉が使われています。
正規労働者は、いわゆる正社員と呼ばれている人のことで、勤務時間や勤務期間などに制限がない状態で働いている労働者のことをいいます。
それ以外の働き方をしている人のことを非正規労働者といい、パート以外にもアルバイト、契約社員、日雇い労働、派遣社員などが含まれます。
労働基準法における時間外労働とは、前にもご紹介しましたが、1日8時間、週に5日勤務をした40時間を法定労働時間といい、この法定労働時間を超えて勤務をした時間のことを時間外労働といいます。
パート社員の場合、正社員よりも短時間労働や1週間の労働日数が少ないことが多いので、法廷労働時間以上に働くことがあまりありません。
残業(シフト外勤務)=時間外労働ではないので、間違えないように注意してくださいね。
これは就業規定などで決められた労働時間です。
企業によっては、1日7時間、週に5日の35時間を所定労働時間と定めているケースがあります。
ですが割り増しで残業代をもらえるのは、あくまで法定労働時間以上働いたときです。
それまではシフト外勤務と同じで、働いた分だけしかお給料をもらえません。
パート・アルバイトの残業代の請求方法
パートやアルバイトの場合、シフト外勤務をしたとしても、通常の業務時間に残業分がプラスされた形で給与が支払われていることがあるというご説明をしました。
自分の勤務時間と残業時間を合わせて計算した結果、間違いなくシフト外残業の残業代が支払われていない場合は、違法になります。
この場合は雇用主に請求することになります。
タイムカードで勤怠を管理している会社もありますが、社員証のカードを入退社のときにスキャンすることで勤務時間が管理されていることもあります。
雇用主に未払いの残業代を請求するために、勤務時間を証明できる具体的な証拠を集めましょう。
証拠を集める
まずは、第三者に対しても客観的に提示できる証拠を集めます。
タイムカードのコピーを取ったり、勤怠が管理されているパソコンの画面などを印刷して、自分が実際に行った勤務時間を記録しておきます。
書類として提示できる証拠がなければ、まず勝ち目はありません。
ただし、意図的に残業代を払わない企業の場合、証拠集めをしていることがわかってしまうと、証拠を隠蔽(いんぺい)されてしまう可能性があります。
証拠集めは慎重に行ってくださいね。
証拠には以下のような書類を準備しておくといいですよ。
- 自分が実際に行った勤務時間を証明できるタイムカードや勤怠記録
- 採用されたときにもらった「雇用契約書」や「労働契約書」
- 就業規則(web上などで閲覧するようになっている会社は、就業時間、時間外労働について、休日などについてなどについて書かれた項目を印刷しておきましょう)
- 残業をしたときに自分が送ったメール(送信時間が記録されているため、残業した証拠になる)
- 残業時間などをメモした忘備録や日記(自分で書いたものですが、これも証拠として使える場合があります)
- 業務を依頼されたときの指示書等(本人が勝手に残って遊んでいたといわれないように、会社の指示で残っていたことを証明するため)
雇用主と話し合う
証拠を集めたあとは、一番手っ取り早いのは雇用主と話し合いをすることです。
ただし、残業をしているのをわかっていて、残業代を支払っていない場合は、残業代を直接請求しても素直に支払ってもらえないことも考えられます。
その場合は、次の手段に移りましょう。
労働基準監督署への申告
労働基準監督署に会社の名前で申告書を作成し、業務時間の証拠や未払いとなっている証拠品を添付して郵送で労働基準監督署に書類を送付します。
申告書を受け取った労働基準監督署は調査を開始してくれるので、支払い勧告を受けた会社が未払い分の残業代を支払ってくれることがあります。
労働基準監督署への申告の仕方がわからない場合や、口頭で相談したい場合は、管轄の労働基準監督署を調べて、まずは電話をかけて相談してみてくださいね。
■労働基準行政の相談窓口|厚生労働省
個人ではなく弁護士などに依頼をして残業代請求する場合の注意点
個人で雇用主に支払いを請求しても支払いをしてもらえない場合は、弁護士などに依頼することもできます。
ただし弁護士を依頼する場合は、弁護士料が発生するので注意も必要です。
請求できる残業代と弁護士の依頼する費用を比較しよう
弁護士に依頼して、仮に未払い分の残業代を支払ってもらえたとしても、弁護士料の方が高くなってしまった場合は、依頼しても意味がなくなってしまいますね。
まずは、今まで支払ってもらえなかった残業代を自分でしっかり計算してみてください。
その上で弁護士料を確認してみましょう。
弁護士によって同じ内容を依頼したとしても、弁護士料が異なります。
ホームページなどに弁護士料が記載されている場合もありますが、詳細は直接確認してみないとわからないことも多いです。
初回の相談料は無料で行っていて、実際に依頼すると決まったときに弁護士料が発生してくることがほとんどです。
まずは、直接弁護士事務所に電話をしてみてください。
未払金が140万未満の場合は公認行政書士にも依頼可能
行政書士は一般的には民事に関わる書類作成などを行うことが仕事です。
そして残業代の未払金が140万未満の場合、認定行政書士の資格がある行政書士であれば、残業代の未払い請求を依頼することができます。
弁護士は、法のすべての業務を依頼することができますが、弁護士料が高額になることがあります。
行政書士の場合、依頼料は安価で済みますが、弁護士とは違い一般的な裁判は介入することができません。
しかし、認定行政書士の資格を持っていれば、140万未満の残業代未払い請求の簡易裁判所の控訴まで依頼することができます。
一度相談してみてくださいね。
残業代を請求には時効がある(2年間)
未払いの残業代を請求する場合、時効があるので注意する必要があります。
未払金の請求の時効は2年間です。たとえば、5年間にわたり残業代の未払金があったとしても、請求できるのは2年以内の未払金に関してのみです。
その前の3年間分は時効のため請求することができません。
弁護士などに依頼して残業代の未払い請求をするときは、2年以内の未払金しか請求ができないので、注意してくださいね。
まとめ
パート代の残業代は、シフト以上の勤務を行った場合支払ってもらうことができます。
ただし会社によっては給与明細の時間外労働の項目に記載されていないこともあるので、本当に残業代が支払われていないのか、確認する必要があります。
そして、あきらかに残業代が支払われていない場合は違法です。
残業代を請求する方法をいくつか紹介しましたが、弁護士などに依頼する場合は弁護士料が発生します。
回収したい金額と弁護士料をしっかり調べてから依頼するようにしてください。
回収金額よりも弁護士料の方が高額になってしまうこともあるので、注意してくださいね。