パート勤務で退職金をもらう条件とは
「退職金?パートだから関係ないよね」
一般的に、そう思われているようです。
実は、パートでも退職金がもらえるケースがあるんです。
そこで今回は、
・パートでも退職金がもらえるケースとは?
・退職金がもらえるのか確認する方法
などパートの退職金について詳しく解説します。
パートでも退職金がもらえる場合がある
実は、パートに限らず、『退職金を必ず支払わなければいけない』という法律はありません。
法律で決められているのは、『退職金制度の有無などを就業規則に記載しなければならない』ということだけなんですね。
退職金を支払うかどうかを決めるのは?
× 法律
○ 事業主
事業主が
「パートに対しても退職金の支払いをする」
と決めて、
就業規則に
「パートに対しても退職金の支払いをする」
と記載されている場合は、パートでも退職金をもらうことができるということですね。
退職金がもらえるのか確認する方法
前の項目でご紹介したように、従業員に対して退職金を支払う場合は、その旨を就業規則に記載しなければいけないというが法律で定められています。
そのため退職金がもらえる場合は、必ず就業規則に記載されているということです。(就業規則内ではなく、退職金規定として別に定められていることもあります)
就業規則をもらったかわからないという人は、労働契約書に記載されている場合もありますので労働契約書を確認してみてくださいね。
退職金をもらえる条件とは
パート社員が退職金をもらうための最も重要な条件は、「会社がパート社員に対して退職金の支払いをするという規定があることです。」
その上で、その他の条件として「勤続年数が〇年以上」、「週に〇時間以上勤務していた者」などの具体的な条件が記載されていた場合は、その条件を満たしている必要があります。
パートの退職金はどのように支払われるの?
退職金制度を定めている企業の場合、さまざまな方法で退職金に充てるお金を準備しています。
大手企業の場合は独自の方法でお金を運用しているケースもありますが、中小企業は「中小企業退職金共済制度」を利用しているケースが多いようです。
中小企業退職金共済制度とは
中小企業退職金共済制度は、昭和34年に設けられた中小企業のための退職金制度です。
事業主が中小企業共済と退職金共済契約を結び、毎月一定額の掛け金を金融機関に納めます。
従業員が退職すると、積み立てられた共済金から退職金が支払われるしくみになっています。
掛金は、事業主が全額負担しているので従業員の負担はありません。
納付された共済金は、政令で定める利率(年1%)に厚生労働大臣が定めた利率を加えた利率で運用されています。
中小企業退職金制度の共済の掛金について
中小企業退職金制度では、一般社員(正社員)に対しての掛金は、次のようになっています。
一般社員(正社員)に対しての掛金
5,000円~30,000円の間の16種類
パートタイマーのような短時間労働者を加入させる場合は、特例で次のようになっています。
短時間労働者に対しての掛金(特例)
2,000円、3,000円、4,000円
短時間勤務とは、正社員よりも1週間の労働時間が短く、かつ1週間の労働時間が30時間未満の従業員のことをいいます。
パート社員であってもフルタイムパートなどでこの条件を超えてしまう場合は、正社員と同様の5,000円以上の通常掛金で加入しなければいけない決まりになっています。
また、いくらの掛金の共済に加入するかについては事業主が決めるものです。
そのため退職金は「短時間パートはいくら」、「フルタイムパートはいくら」「一般社員(正社員)はいくら」と、一言でいえるものではないんですね。
短時間勤務のパートの場合の退職金
退職金の計算方法は会社によって異なるため、それぞれの会社が決めている計算式に当てはめなければ正確な金額は計算することができません。
ここでは、退職金の準備として中小企業退職金制度を利用している場合の退職金についてご紹介します。
短時間労働者の掛金の最低額が2,000円なので、掛金が2,000円の共済に加入していたとして退職金を計算してみます。
■短期間勤務パート対象者のために掛金2,000円で共済に加入し、5年間勤務したのちに退職金を支払う場合
払込回数 12か月×5年=60回
退職金 120,000円
フルタイム勤務のパートの場合の退職金
共済金の掛金の項目でご紹介しましたが、フルタイムパートの場合、労働時間が正社員の3/4以上になることが予想されます。
一般社員(正社員)の掛金の最低額の5,000円なので、5,000円の共済に加入していた場合の退職金を計算してみます。
■フルパート対象者のために掛金5,000円で共済に加入し、5年間勤務したのちに退職金を支払う場合
払込回数 12か月×5年=60回
退職金 300,000円
自分が勤務している会社が中小企業退職金制度を利用していれば、フルタイムパートの場合、最低でも30万円の退職金を受け取れる可能性があります。
30万円は、主婦としてはうれしい金額ですね。
パートの退職金でも税金ってかかるの?
パートでも退職金を受け取る場合、退職金に税金がかかるのでしょうか?
結論からお話すると、普段のお給料とは別に退職金に対して所得税がかかります。
ただし、「退職金控除」が認められているため、パートの退職金に対して所得税が課税される可能性はほぼないといえます。
退職金控除
税金は、所得(収入)に対して必要経費を差し引いた金額に対して課税されます。
自営業の人であれば、たとえば「家賃」「光熱費」「人件費」「仕入れ代」などが経費として認められます。
それと同じようにサラリーマンの場合も、いくつかの経費が「控除」という形で認められているんですね。
サラリーマンの控除については、こちらをご覧ください。
関連記事:「給与所得控除」とは-パートでも知っておきたい「年収」と「所得」との関連
退職金の経費として認められているのが「退職金控除」というわけです。
具体的には、勤続1年あたり40万円の控除をすることができるんです。
勤続5年を例にすると…40万円×5年=200万円です。
つまり、勤続5年の人は、退職金の金額が200万円以下であれば税金を支払う必要がないということです。
ただし退職金を受け取った人全員が、自動的にこの控除を受けられるわけではありません。
「退職金控除」を受けるためには、退職金を受け取る前に事前に「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出しておく必要があります。
「退職所得の受給に関する申告書」って何?
「退職金所得の受給に関する申告書」とは、所得税法に基づき、退職金を受け取る人が退職金を支払う人に対して提出する書類のことをいいます。
<提出時期>
退職金を受け取る前まで
<提出先>
退職金の支払い者(つまり勤務先のことですね)
書類はこちらからダウンロードすることができます。
・記入用
・入力用
この申告書を提出しなかった場合、20.42%の税率で源泉徴収が行われますので注意してくださいね。
まとめ
パート勤務であっても、事業主が「パートさんに対しても退職金を払います」と決めている場合は退職金をもらうことができるんですね。
しかし現実的には、退職金が支払われない会社が多いので、就業規則で確認してみてください。
退職金をもらえる会社の場合、「退職所得の受給に関する申告書」の手続きをしないとかなり損をすることになってしまいます。
退職金をもらう前に忘れずに会社に書類を提出してくださいね。