パートでも雇用保険なしは違法?パートの雇用保険加入条件とは

雇用保険の手続きは会社が行っているので、パートで雇用保険に入れる条件や、雇用保険を加入していることで受けられる制度など詳しいことがよくわからないという人も多いと思います。

そこでパートが雇用保険に加入できる条件や、条件を満たしているのにも関わらず雇用保険に加入させてもらえないときの対処法などについてご紹介します。

パートが雇用保険に加入する条件

下記の2つの条件を満たしている場合は、パートであっても雇用保険に加入する義務があります。

31日以上引き続き雇用されることが見込まれている

1つ目は、31日以上引き続き雇用されることが見込まれている場合です。

仮に雇用期間の定めがないケースであっても、下記のような状況で働いている場合は31日以上の雇用されることが見込まれると判断されます。

1. 期間の定めがなく雇用される場合
2. 雇用期間が31日以上である場合
3. 雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
4. 雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合

1週間の所定労働時間が20時間以上の場合

2つ目は、1週間の所定労働時間が20時間以上の場合です。
たとえば、1日4時間勤務の人が平日5日間仕事をしている場合は、1週間の労働が20時間以上になりますね。

「所定労働時間」とは、労働契約などで労働者が働くことになっている時間のことをいいます。
たとえば、10時から就業を開始、12~13時まで休憩時間、13時~15時まで勤務をしている人の場合、10~12時まで2時間、13~15時まで2時間なので所定労働時間は4時間ということになります。
休憩を含めた拘束時間は5時間ということになりますが、休憩時間は労働時間には含まれないので間違えないように注意してくださいね。

加入条件の両方を満たす場合は雇用保険の加入は義務!

雇用継続期間が31日以上になることが見込まれていて、かつ1週間の労働時間が20時間以上になる労働者は雇用保険に加入しなければいけない義務があります。

ただし、学生アルバイト(夜間大学、通信制の学校、定時制高校などの学生は除く)は、学生が本業なので労働者とみなされないため雇用保険の加入義務はありません。

雇用保険に加入させてもらえない場合の対処法

労働期間や労働時間の条件を満たしているにも関わらず労働者を雇用保険に加入させていない場合は、事業主は『雇用保険法』という法律に違反しています。

現在勤務中の人が雇用保険の加入条件を満たしているにも関わらず雇用保険に加入してもらえていない場合は、まずは会社に雇用保険に加入の手続きをお願いしてみましょう。
それでも加入させてもらえない場合は、管轄のハローワークに相談することができます。

会社を退職後に雇用保険に未加入だったとわかった場合の対処法

会社を退職後に、失業保険の手続きをしようとしてはじめて雇用保険に加入していなかったことが発覚した場合は、さかのぼって雇用保険の加入手続きを行うことができます。
まず、管轄のハローワークで「被保険者資格取得の確認請求」を行いましょう。
これは、労働者が雇用保険の被保険者の資格があることを主張するもので、文書で提出しても口頭で請求してもOKです。

雇用保険の加入義務のあった労働者(被保険者)の請求を受けると、ハローワークは会社に対して過去にさかのぼって雇用保険に加入するよう指導が入ります。
退職後に被保険者資格取得の確認請求の手続きをする場合は、会社に在籍していたことを証明できる給与明細などを持参して手続きを行うようにしましょう。

雇用保険の手続きは会社が行うものなので、被保険者(労働者)が手続きをする必要はありません。

会社が過去にさかのぼって雇用保険の加入を行うと、会社から本人負担分の雇用保険料を支払うように連絡がきますので、保険料の支払いをしましょう。

さかのぼって自己負担分を支払うとなると、いくらくらいの金額になるのか不安になる人もいるかもしれませんね。1か月のパート収入が5万円の人が、2年分の自己負担分の保険料を例にとって一括納入する保険料についてご説明します。

雇用保険の一般企業の本人負担率は3/1000です。

1か月のパート収入が5万円の場合、50,000円×0.003=150円です。
つまり、一か月の雇用保険料の自己負担額は150円ということですね。

2年さかのぼったとすると12か月×2年なので、24回分の保険料を負担することになります。
2年分の雇用保険の自己負担額は、150円×24か月=3,600円ということです。

パートを掛け持ちしている場合の雇用保険はどうなる?

パートを掛け持ちしている場合、雇用保険はどれか1つの勤務先の雇用保険にしか加入することができません。ほとんどの場合は掛け持ちをしているすべての勤務先が雇用保険の加入条件を満たしていることは少ないので、雇用保険の加入条件を満たしている会社やお店の雇用保険に加入することになります。

扶養範囲内で働いていても雇用保険って加入しないといけないの?

扶養範囲には、「税務上の扶養範囲」と「社会保険上」の扶養範囲があります。103万円の壁、130万円の壁という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。これは、妻のパートの金額がこれらの金額を超えてしまうと夫
の給料の給与の控除が受けられなくなったり、夫の保険の扶養として加入することができなくなる金額のことなんですね。

これらの扶養範囲の条件と雇用保険の条件には関連はありません。前の項目でご紹介しましたが、31日以上雇用される見込みがあり、1週間に20時間以上働いている人は、夫の扶養範囲である、なしに関係なく雇用保険に加入する義務があります。

パートの雇用保険料っていくら引かれる?

雇用保険は、本人と会社で各々負担しています。
負担率の割合は、「一般企業」「農林水産・清酒製造事業」「建設事業」で違いがあります。

平成31年度の雇用保険の負担率は、一般企業の場合は本人負担が「3/1,000」、事業主負担は「6/1,000」です。
農林水産、清酒製造事業の本人負担は、「4/1,000」、事業主負担は「7/1,000」です。
建設事業の本人負担は、「4/1,000」、事業主負担は「8/1,000」です。

雇用保険の本人の負担率は、一般企業は「3/1,000」、農林水産、清酒製造事業、建設事業の本人負担は「4/1,000」です。

月収に対してこの本人負担率を掛けた数字が、実際に給料から差し引かれる雇用保険料になります。

パート代が50,000円の場合と100,000円の場合で雇用保険料を計算してみます。

1か月のパート代が50,000円だった場合、50,000円×0.003=150円です。
1か月のパート代が100,000円だった場合、100,000円×0.003=300円です。

10万円の収入があったとしても、雇用保険の本人負担額は一ヶ月わずか300円なんですね。
※給与所得の金額は、総支給額の金額です。

雇用保険のメリット・デメリット

雇用保険に加入することのメリットやデメリットにはどのようなことがあるのでしょうか?

会社を辞めた場合、次の仕事が見つかるまで失業保険を受給することができるというのはなんとなく知っている人も多いかもしれません。

その他に雇用保険に加入していることで受けられるサービスなども含めて、メリット、デメリットについてご紹介します。

雇用保険に加入するメリット

雇用保険に加入すると、以下の制度を利用することができます。

教育訓練給付金制度

「教育訓練給付金制度」という言葉を聞いたことがありますか?これは、失業期間中に次の就職のために有利になる、または必要な資格を取得した場合、特定の条件を満たした場合に資格を取得するためにかかった費用の一部(最大10万円まで)を負担してもらうことができる制度です。

しかし、資格を取得すれば誰でも教育訓練給付金がもらえるわけではありません。
「教育訓練給付金」をもらうためには「国で指定している資格を取得すること」、「雇用保険に1年以上加入していること」などの条件を満たす必要があります。

教育訓練給付金制度を利用して資格取得を考えている場合は、取ろうとしている資格が国の指定講座になっているのか、また自分が受給資格の対象になっているのか確認しておくことをおすすめします。

再就職手当

「再就職手当制度」とは、できるだけ早く次の就職先が決まるようにするために設けられている制度のことをいいます。
具体的には、失業保険を受給中に給付日数を1/3以上残して再就職ができた場合、一時金をもらうことができるというものです。

せっかく、失業保険をもらっているのに早く就職してしまうと、失業保険をたくさんもらえなくてもったいないと思う人もいると思うんですね。でも、早く就職が決まったとしても残っている失業手当の金額をもとに、一時金がもらえるようになっているのが再就職手当なんですね。

ただし、再就職手当を受給する場合も条件を満たしている必要があります。早く再就職先が決まった場合は、再就職手当の受給対象者になるのかを確認してハローワークで申請をしてくださいね。

就業促進定着手当

「就業促進定着手当」は、再就職手当の支給を受けた人の中で再就職先に6か月以上雇用され、かつ再就職先の6か月分の賃金が離職前の賃金よりも低い場合に基本手当の支給日数の40%を上限として低下した賃金の6か月分が支給されることをいいます。

簡単にいうと、再就職手当がもらえるくらいに早く次の就職先が決まり、なおかつ新しい就職先が離職前の会社よりも賃金が低い場合にもらえる手当だということです。

自分が支給対象なのかよくわからない場合は、ハローワークに問い合わせをしてみてください。

高年齢雇用継続給付

「高年齢雇用継続給付」とは、定年後も働き続けた人が定年前に働いていたお給料と定年後のお給料と比較して、現在のお給料が75%未満に低下した場合に支給されるものです。
現在の給料の中には、通勤手当、家族手当、住宅手当などの各種手当も含まれます。

雇用保険に加入するデメリット

雇用保険に加入するデメリットをあえて言うのであれば、雇用保険の自己負担額があるということです。
ですがご紹介したように10万円もらっている人でも自己負担額は300円なので、逆に雇用保険に加入しないデメリットの方が大きいといえるでしょう。

出産予定のある人が知っておきたい雇用保険の制度の内容とは?

今後出産予定がある人に、知っておいてほしい雇用保険制度の内容についてご紹介します。

産休中も雇用保険の保険料って支払わないといけないの?

産前産後休業中は、事業主の申し出があると健康保険、厚生年金の保険料は、事業主からも被保険者からも徴収が行われず、保険料の支払いが免除されることになっています。

被保険者から産前産後休業の申請があった場合、事業主が産前産後休業中に手続きを行います。

保険料の支払いが免除されている期間も健康保険や厚生年金の被保険者から外れてしまうこともありませんし、年金などの支払いで保険期間を計算する場合、免除期間も保険加入期間として計算されます。

子どもが1歳になるまでもらい続けられる育児休業給付金とは

「育児休業給付金」とは、雇用を継続したまま育児のために一時的に育児休暇を取り、その後職場復帰する人が受給できる制度です。

育児休暇中は、実際に会社では仕事をしていない状態なので会社からお給料をまったくもらえない(無給)であっても法律的に問題がありません。従業員から育児休暇の申請があった場合、会社はこの申し出を拒否することはできないのですが、給料を支払う義務はないということですね。

そのため、育休中はほとんどの会社は無給というところが多いです。

「育児休業給付金」は、会社との雇用関係を継続している状態で、育休中の人が育休前の収入より8割を下回ったときに給付金をもらうことができる制度です。

ただし、この給付金は育児中というところがポイントです。
産前産後休業を申請する場合、出産前の期間には「育児休業給付金」の対象外なので間違えないように注意してくださいね。

また、出産日が予定日よりも遅れてしまった場合は、出産予定日から出産日までは産前休業となるのでこの期間は育児中とはみなされません。

育児休業給付金は、原則として子どもが1歳2か月になるまでもらうことができます。
(条件により受給できる期間が異なる場合があります)

支給額は、原則として休業開始時賃金日額×支給日数の67%(育児休業の開始から6か月経過後は50%)です。

<給料が10万円の人のケース>

最初の半年は67,000円、残りの8か月は50,000円です。
402,000円+400,000円=802,000円もらえるということです。

育児休暇は延長が可能なケースもありますので、詳細につきましてはハローワークに確認してみてください。

育児休業給付金を受け取った人がそのまま退職した場合って給付金は返還するの?

育児休業給費金は、育児のために育休を取っている人が会社に復帰するまでの期間受給できる制度です。
給付金を受け取った人がなんらかの事情でそのまま会社を退職した場合は給付金を返さないといけないのか不安になる人もいると思うんですね。

これに関しては、復帰を前提に産前産後休業を取得していて給付金を受け取った場合は、受け取った給付金は返還する必要はありません。
ただし出産を機に退職することがはじめから決まっている場合は、育児休業給付金の支給対象外になりますので注意してくださいね。

出産のために退職した場合も失業保険はもらえる?

失業保険は、退職後次の仕事が決まるまでの期間の生活を保障する制度です。そのため、病気やケガ、妊娠、出産などですぐに働くことができない場合は、支給対象外になります。

ただし、出産後に就業が可能になり、仕事を探し始めた場合は仕事が決まるまでの期間は失業保険の支給対象になります。詳細は、ハローワークで確認してみてください。

まとめ

雇用保険という言葉は聞いたことがあるし、仕事を探しているときに失業保険をもらうことができる制度というのは何となく知っていた人もいると思います。

でも、実は1か月に数百円の保険料を支払うだけでこれだけの給付金を受け取れる制度だということを知らなかったという人も多いのではないでしょうか?

ただし、それぞれの制度を利用して給付金を受け取る場合は、所定の条件を満たしている必要があります。
所定の条件に関する詳細につきましては、ハローワークで確認して手続きを行うようにしてくださいね。

 

 

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