妊婦加算とは?始められた背景と今後について
妊婦加算という言葉を聞いたことがありますか?
なんとなく言葉は聞いたことはあるけど、内容はよくわからないという人も多いかもしれませんね。
そこで妊婦加算とは何か?今減殺どうなっているのか?など、妊婦加算が始められた背景と今後についてわかりやすく解説します。
妊婦加算とは?
妊婦加算とは、妊婦さんが病院にかかったときに支払う医療費に関する言葉です。
医療費は診療報酬点数を基に計算されています。
そして妊婦さんが病院を利用すると、その点数にさらに何点か加算されます。
その加算される点数が、妊婦加算です。
つまり妊婦が診療を受けると、通常よりも高い金額を請求されるるのです。
妊婦加算の説明の前に、医療費の計算方法について簡単にご説明します。
医療費は診療報酬点数表に基づき計算されている
病院でもらう領収書を見ると、初・再診料〇〇点、検査〇〇点のように金額ではなく点数が書かれていますね。
医療行為に必要な薬代、技術料、管理料はこの診療報酬点数に基づき、計算されます。
診療報酬1点は10円で計算します。(改正などで金額が変わる可能性があります)
たとえば、初診料が270点と記載されていた場合は、初診料の金額は2,700円になるということですね。
診療報酬点数って何?
前の項目で説明したようにすべての医療行為には、診療報酬点数が定められています。
たとえば、〇〇の点滴を1回受けると○○円のように金額が設定されているのではなくて、点数によって診療代が決められているということです。
妊婦加算は、産婦人科を受診したときだけではなく、妊婦さんが内科や歯科などを受診したときなどにも適用されます。
たとえば、妊婦さん以外の人が初診で病院にかかった場合、初診料が200点だったとします。
妊婦加算が75点だった場合、妊婦加算として75点がプラスされるので、妊婦さんの初診料は275点になるということです。
この診療報酬点数は、年に1度改正されています。
改正されるといっても、すべての点数が変わるわけではなくて、特定の項目の点数が見直しされることもありますし、医療体制や行為に対して、加算が認められるようになることもあります。
診療報酬点数の詳細は、診療報酬点数表というものに記載されています。
医療行為の内容はとても多いので、診療報酬点数表は、「医科診療報酬点数表」と「歯科診療報酬点数表」にわかれています。
医科診療報酬点数表…いわゆる普通の病院、クリニック、医院などにかかったときの医療行為に関する点数が記載されています。
歯科診療報酬点数表…歯科の医療行為に関する診療報酬点数が記載されています。
妊婦加算っていくら?
初診料、再診料の診療時間内の妊婦加算の点数は、初診料が75点、再診料が38点です。
金額に換算すると、初診料が750円、再診料が380円です。
本人負担額は3割なので窓口での負担額は、初診料225円、再診料114円が妊婦加算によって増えることになります。
※時間外や深夜など、状況によって負担する金額は変わります。
妊婦加算が始められた背景とは
妊婦加算が始められた背景は、妊婦さんに医療行為を行う際に、妊婦さん以外の人に対して医療行為を行う場合とは違う配慮が必要になるケースがあることです。
レントゲン撮影の前に妊娠の有無を確認されたり、妊婦や胎児に影響がある薬などを使う場合、妊娠の有無を聞かれた経験があるという人もいると思います。
それは、妊婦さんや胎児を守りながらの診察や治療が必要だからです。
その特別な治療を確実におこなうために、妊婦加算という制度が生まれたのです。
妊婦加算が凍結ってどういうこと?
妊婦加算が凍結されたというニュースを見たことがありますか?
妊婦加算は、妊婦に対して通常の診察よりも丁寧な診察が必要になるという理由から、2018年(平成30年)の診療報酬の改正により実施になりました。
ですが十分な説明がないまま加算されたり、コンタクトレンズの処方など、特別な診察を行う必要がない場合も、妊婦加算が算定さるなどの事例が発生しました。
そのため2018年の秋以降、妊婦加算に納得ができなかった妊婦さんから不当な加算の事例をSNSなどに投稿され、ニュースなどで取り上げられるようになりました。
このことを受けて妊婦加算についての議論が行われ、妊婦加算の在り方や見直しが行われることになりました。
その結果、2020年の診療報酬改定までの間は妊婦加算の一時停止(凍結)が決定しました。
妊婦加算についての厚生労働省のコメントとは
妊婦加算について、厚生労働省は以下のコメントを発表しました。
「妊婦加算について、厚生労働大臣として、改めてこの加算の趣旨に立ち返り、医療保険制度や診療報酬体系の中で妊婦加算の在り方について考えてみました。妊婦の方がより一層安心して医療を受けられるようにするという、妊婦加算が目指すものは依然として重要だと考えています。しかしながら、それを実現する手段として、妊婦加算という仕組みが適当であったかどうか、改めて考えてみる必要がある、と考えるに至りました。
妊婦の方への診療に熱心に携わっていただいている医療関係者のみなさまには申し訳ありませんが、妊婦加算については、いったん凍結することとし、妊婦の方に対する診療の在り方について、有識者も含めてご議論いただいた上で、妊婦加算の在り方について、改めて中央社会保険医療協議会で議論してもらうこととしたいと考えております。」
妊婦加算は2020年から再開の見通し
一度凍結された妊婦加算ですが、2019年5月現在、2020年から再開を目指し議論を開始しています。
通常よりも丁寧な診察が必要だから、それだけ医師の負担が増える。
だから医師への報酬を増やすべきだという意見は当然のことです。
しかしその負担を妊婦に求めるのはどうなのでしょうか?
妊婦であること、それが原因で負担が増える。
当然、妊婦はこう考えます。
少子化が大きな問題となっている現在、
今まさに子どもを産み育てようとする女性が
差別されていると少しでも感じるような制度、
それが、これからの日本に必要な制度なのでしょうか。
本当に日本の未来を考えて決めているのか、疑問に感じます。
まとめ
妊婦加算に関しては、妊婦加算の目的や内容の周知不足、議論不足などから2019年現在、一時停止の状態になっています。
2020年以降どのような形になるのかはまだ決定されていませんが、医療機関と妊婦、双方で受け入れられるものにして欲しいですね。