安心して老後を送るために必要な生活費はいくら

結婚して、子どもが生まれて、子どもが独立して…
老後って、意外とすぐそこです。
老後の生活で一番心配になるのはお金の準備ですね。
ですが、安心して老後の生活を送るためにはどれくらいの金額が必要なのか、具体的な金額をイメージするのは難しいですね。
そこで、安心して老後の生活を送るためのお金や税金などについて詳しくご紹介します。
早いうちに老後の生活を意識して少しずつ老後の蓄えを準備しておきましょう。
老後の生活費で必要な金額
生命保険文化センターが平成28年度生活保障に関する調査をしています。
その中に、10代後半(18歳)~60代の男女に、老後の生活費についてアンケートしたものがあります。
それによるとどの年代も、平均して22万円あれば、老後は生活できると考えているようです。
では実際に自分が老後を迎えた場合、必要最低限の生活をするためにはいくら必要なのでしょうか。
はじめに必要最低限の生活をするために必要な生活費と、豊かな老後を送る場合の生活費についてご紹介します。
老後の夫婦二人分の最低の生活費は
総務省の家計調査によると、夫婦二人の平均的な生活の内訳は以下のような結果が出ています。
内訳 | 金額 |
食費 | 76,000円 |
住居費 | 14,000円 |
水道光熱費 | 21,000円 |
日用品費 | 10,000円 |
被服等 | 7,400円 |
保険医療費 | 15,000円 |
交通・通信費 | 24,000円 |
教養娯楽費 | 24,500円 |
その他支出(交際費など) | 42,500円 |
合計 | 234,400円 |
(出典:総務省統計局:家計調査年報(家計収支編)平成29年より)
住居費が14,000円?
少し少なく感じますね。
これは賃貸住宅に住んでいる人だけではなく、持ち家があり、ローンなどの返済が住んでいる人も多く含まれているためです。
ローンの返済が済んでいれば、家の修繕費などの分だけを確保しておけば大丈夫という金額が14,000円ということです。
賃貸住宅に住む人の場合は家賃が必要になるので、家賃分の住居費を確保する必要があります。
夫婦二人で生活する場合、この項目以外にもかかる費用があることを考慮すると、最低でも22~23万円の生活費が必要になるということがわかりますね。
豊かな老後を送るための生活費
では、たまには旅行をしたり、趣味を楽しんだりしながら豊かな老後を送りたい場合は、いくらくらいの金額が必要なのでしょうか。
夫婦二人で豊かな老後生活を送るために確保したい金額は、37万円程度といわれています。
高齢になってくると、家事をすることも大変になってくることもあります。
買い物や料理をすることが大変になると、宅配の食材やお弁当などを利用することが多くなるかもしれません。
私の母親は、私の父が亡くなってから普通にできていたことが少しずつできなくなっていきました。
最終的にご飯を作れなくなり、昼食だけ宅配弁当を利用したことがあります。
1食の金額は400円程度でしたが、毎日のことなので1万円程度の食費が必要になりました。
高齢になると、全ての人がご飯を作れなくなるわけではありません。
ですが、宅配などのサービスに頼らざるを得ない状況になってしまい、食費が増えてしまう可能性もあるということです。
他にも紙おむつなど今まで必要のなかったものに、お金がかかることもあります。
37万円という金額だけを聞くと、そんなに必要なの?と思う人もいるかもしれません。
ですが、歳を重ねると予期していなかったことが起こります。
突然の出費があった場合でも困らずに生活するためには、決して多すぎる金額ではないんですね。。
老後一人暮らしの生活費
老後、一人暮らしになった場合、必要な生活費はいくらくらいなのでしょうか。
老後の一人暮らしに必要な金額は16万円程度必要だというデータがあります。
内訳 | 金額 |
食費 | 40,000円 |
住居費 | 20,000円 |
水道光熱費 | 11,000円 |
日用品費 | 5,000円 |
被服等 | 6,000円 |
保険医療費 | 7,000円 |
交通・通信費 | 19,000円 |
教養娯楽費 | 19,000円 |
その他支出(交際費など) | 35,000円 |
合計 | 162,000円 |
(出典:総務省統計局:家計調査年報(家計収支編)平成29年より)
こちらのデータも夫婦二人の生活費同様に、持ち家と賃貸住宅の人の金額が平均されているため住居費が20,000円で計上されています。
賃貸住宅に住んでいる場合は、家賃分の金額が必要になるということですね。
老後の生活費と税金
会社を辞め、定年を過ぎても税金を支払います。
収入が年金のみでも、所得税・住民税を徴収されます。
さらに持ち家の場合は、固定資産税も必要です。
また国民健康保険料や後期高齢者医療制度(75歳以上)の健康保険料を支払う必要があります。
これらは年金から支払わないといけません。
税金や保険料も生活に必要な金額として考えておかないと、払えなくなってしまう可能性があります。
年金も確定申告をおこなう
年金も所得です。
そのため公的年金以外に収入がない人でも、金額が多い人は確定申告を行い、所得税を支払わなければいけません。
ただし下記の条件を満たす場合は、確定申告が免除されます。
・公的年金の受取額が、年間400万円以下のとき
・公的年金等以外の所得が、年間20万円以下のとき
この2つの条件を満たした場合は、確定申告の必要はありません。
ただし、所得税は支払う必要がない場合でも、住民税は支払わなければいけないことがあります。
会社からお給料をもらっている人は、確定申告をしたことがないと思います。
ですが老後は、自分で申告をしないといけなくなるのです。
年金が月額15万円の人の所得税と住民税の具体的にはいくらくらい?
具体的に所得税はいくら払うことになるのでしょうか?
65歳以上で年金を月に15万円もらっているとして、
(年収:15万円×12か月=180万円)
・一人暮らし
・配偶者がいる
二つのケースを例に、実際に計算してみます。
一人暮らしのケース
公的年金等に係る雑所得の速算表をみると、65歳以上の場合、120万円控除されます。
これ以外に所得税の控除には38万円の基礎控除が認められています。
これを計算式に当てはめると
180万円―(120万円+38万円)=22万円
となり、この金額が課税対象になります。
所得税が5%、住民税が10%で計算すると
所得税・・・22万円×5%=11,000円
住民税・・・22万円×10%=22,000円
年間で33,000円、月額にすると2,750円の所得税・住民税を支払うことになります。
配偶者がいるケース
配偶者がいる場合、基礎控除(38万円)+配偶者控除(38万円)が受けられます。
先ほどの計算式に当てはめてみると
180万円 - (120万円+38万円+38万円) = -16円
となり、マイナスですね。
課税対象がないとみなされるので所得税、住民税は非課税になります。
老後の国民健康保険料・後期高齢者医療制度
仕事を退職してから74歳までは国民健康保険、75歳からは後期高齢者医療制度に加入することになります。
国民健康保険、また後期高齢者医療制度は、所得によって保険料が変わるのですが、控除が認められているものは公的年金控除と基礎控除33万円のみなので、保険料の計算をするときは注意する必要があります。
国民健康保険
国民健康保険の保険料は、前年度の所得に応じて軽減措置を受けることができます。
軽減される割合は以下のとおりです。
軽減率 | 前年の所得 |
7割軽減 | 33万円以下 |
5割軽減 | 33万円 + 27.5万円 × (被保険者数) 以下 |
2割軽減 | 33万円 + 50万円 × (被保険者数) 以下 |
60歳以上74歳以下で、年収が200万円の人の国民健康保険の保険料の全国平均は月額でおよそ12,000円です。
5割の軽減措置を受けた場合、月額6,000円になるので、これくらいの金額を目安に保険料を確保しておくとよいでしょう。
※国民健康保険の保険料は、お住まいの自治体によって保険料が変わります。
お住まいの自治体のページで確認してみてください。
後期高齢者医療保険
75歳以上の後期高齢者医療保険の場合も、受け取っている年金額や住んでいる自治体によって保険料が変わります。
そのため、各自の条件により金額が変わりますが、4,500円前後を目安に保険料を確保しておきましょう。
老後の生活費のシミュレーション
今の生活と老後の生活では、お金をかける項目がどんどん変化していきます。
子どもたちが独立したら…
夫婦が定年退職をしたら…
どんな生活をしたいかを考えて、今の生活費を参考に老後の生活費をシミュレーションしてみましょう。
シミュレーションができるサイトをいくつかご紹介しますので、金額を入力して実際の生活費をイメージしてみてくださいね。
(https://seikatsuhi.com/)
こちらのサイトは、必要と思われる生活費などの金額を入力すると、1か月に必要な生活費の金額を自動的に計算することができます。
各項目の金額を見ながら、計算することができるので、老後の生活に必要な金額をイメージしやすいですよ。
i保険 「老後資金チェックシミュレーション」
(https://www.i-hoken.com/lifesim/nenkin/)
こちらのサイトは、自分や配偶者の収入、どんな生活を望むかについて入力すると、受け取れる公的年金額の予想額と生活に必要とされる金額を表示することができます。
老後を迎えるために蓄えておかなければいけない金額を知ることができるので、貯蓄プランを考えるときに役に立ちます。
一般社団法人 全国銀行協会 「自分で描く未来予想図 ライフプランシミュレーション」
(https://www.zenginkyo.or.jp/special/lps/)
こちらのサイトは、自分の年収、配偶者の年収、子どもの人数、学校はどんな感じで通わせたいというイメージを入力すると、自分の資金に関する収入と生活費の変移やアドバイスを見ることができます。
配偶者や子どもがいないという人も、自分の理想を入力すると具体的な金額を見ることができます。
自分が思い描く未来予想を視覚的にイメージができるのでおもしろいサイトですよ。
定年から年金支給開始までの生活費をどうするか
年金支給年齢が引き上げられたことで、定年の年齢も引き上げられた会社もありますが、まだまだ60歳定年制の会社が多いです。
そこで問題になるのが、定年から年金支給開始までの生活費をどのように確保するかということです。
何もしなければ、定年の60歳から年金支給が始まる65歳までの5年間、収入がまったくないという状況になります。
再雇用制度を利用する
65歳未満(一般的には60歳~64歳以下)で定年制度を設けている事業主は、改正高年齢者雇用安定法の措置の実施義務があるため、「高年齢者雇用確保措置」を取らなければいけません。
この措置には、2種類の方法があります。
1.再雇用制度
定年の年齢に達したときに所定の退職金などを支払い、労働者をいったん退職にします。
その後、再雇用という形でもう一度雇い入れをします。
一般的には正社員扱いにならないので、今までの給与よりも大幅に収入がダウンするケースが多いです。
2.勤務延長制度
定年の年齢に達したあと、本人が勤務延長を希望した場合、退職せずに同じ会社で仕事を続けることができます。
ただし、勤務延長を希望した場合であっても、雇用主は勤務内容や勤務条件について労働者の希望に沿う必要がないとされています。
1と2の違いは、いったん会社を退職するのか、しないのかということです。
1の場合は、いったん退職する形になるので、規定どおりの退職金を受け取ることが可能です。
どちらを選択した場合も定年前の給料よりも大幅に下がることが多いですが、比較的スムーズに仕事を継続することができるというのが最大のメリットです。
再就職する
再就職というのは、定年まで勤務した会社とは別の会社に応募をして就職するということです。
しかし、採用してもらうのが難しい可能性が高いです。
「再雇用制度」や「継続勤務制度」を利用せずに仕事をする場合は、採用が厳しいということを理解した上で、仕事を探す必要があります。
再就職先が見つかるまで、収入がゼロになってしまいますので、生活が維持できるような環境で就職活動をすることが大切です。
個人年金に加入する
公的年金の支給開始は65歳からです。
生命保険会社などの個人年金に加入しておくと、設定した年金受取開始日から所定の条件に基づいた期間や回数で年金と同じように定期的にお金を受け取ることができます。
定年後からすぐにお金を受け取れるように年金受取開始日を設定しておけば、公的年金が開始されるまでの期間を個人年金で補うことができます。
老後を生活費月15万円で暮らすには
厚生労働省年金局の調査によると、厚生年金の平均受給額は月14万5,638円です。
およそ15万円ということになりますね。
老後一人暮らしの生活費の項目で生活費に必要な内訳をご紹介しましたが、このケースで必要な生活費は162,000円です。
つまり、老後の生活費を月15万円で暮らすためには、節約をこころがけ、税金や保険に必要なお金を毎月蓄えて生活しなければなりません。
税金分や健康保険料の分を差し引いて生活すると、月に使える金額は12~13万円です。
月15万円で生活することは不可能ではありませんが、今までよりも生活水準を下げなければ難しいということがいえます。
保険や携帯電話の契約内容の見直しなどをして、できるだけ出費を抑える努力が必要です。
まとめ
家族のために、毎日必死に働いて、毎月やり繰りしながら生活をしていると、自分の老後の生活をイメージするというのはなかなか難しいですよね。
ですが、いざ自分やご主人が定年退職を迎えたとき、生活資金をどのようにするかを事前に考えて対策をしておくことは大切なことです。
現在の厚生年金の平均金額で生活するのは容易なことではありません。
お金は、余裕があるときに貯蓄しようとしてもなかなかできません。
安心して楽しい老後生活を送るために、早い段階から貯蓄、保険などをうまく活用し、自分の資産作りを心がけておきましょう。