生活保護を受けるための条件や申請について調べてみました
「もうどうにもならない…」
病気などの事情で働くことが困難になって、ギリギリまで頑張っても、どうにもならないことありますよね。
それでも必要最低限の生活を送るためには、生活保護に頼ることも必要です。
そこで今回は、生活保護とはどんな制度なのか、また生活保護を受けるためにはどんな条件があるのか、申請はどのようにしたらよいのかなど、生活保護に関する内容をご紹介します。
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生活保護って何?
「生活保護」とは、自分の資産がなく、自分ができるだけの努力をしていても生活に困窮している人が『健康で文化的な生活』をおくることを保障し、その自立を支援するための制度です。
制度の趣旨からもわかるように、生活に困窮していれば誰でも支援してもらえる制度ではありません。
自分の持っている資産を売却したりお金を稼ぐ努力をしても、なお生活に困窮している人が、自立するまでの期間だけ支援してもらえる制度です。
借金をしたことが原因で生活が苦しくなっていたり、働く能力があるにも関わらず働かない人が受けられる制度ではないということですね。
生活保護を受けられる条件とは
生活保護を受けるためにはいくつかの条件があります。
生活保護条件1:資産を持っていない
生活保護を受けるには、資産を持っていない人という条件がああります。
しかし実は、資産に該当するとされる詳細については公開されていないんですね。
一般的には以下のようなものがあると、生活保護の審査には通りにくいといわれています。
1.10万円以上の現金や預貯金
2.貯蓄性のある保険(生命保険、学資保険、養老保険など解約するとある程度の現金が戻るもの)
3.車、バイク
4.使用していない家や土地(今住んでいる家の資産価値がかなり高い場合は、売却を求められるケースがあります)
5.パソコン、高価な液晶テレビ
6.消費者金融や銀行のカードローンのカード
7.宝石類、骨とう品などの生活に直接必要がなく、資産価値の高いもの
ただし条件によっては、手放す必要がないケースもあります。
売却してもさほどお金に換金することができないものは、所有が認められることが多いようです。
車やバイクの保有は認められないの?
基本的には、車やバイクの所有を認められないといわれています。
ですが地方などに住んでいると、車やバイクがなければ買い物や病院に行くときに支障があります。
仕事を探すにしても、車やバイクがないと通勤ができないケースもあります。
このような事情がある場合は、所有が認められることが多いです。
持ち家の人は生活保護を受けられないって本当?
一般的な持ち家の場合、売却して賃貸住宅を借りるよりも、そのまま持ち家に住んでいたほうが生活の負担にならないことも多いです。
そのため、持ち家があっても売却を求められないケースが多いです。
ただし豪華な家で高額で売却できる場合は、売却を求められることがあります。
生活保護条件2:働くことができない
生活保護は「働かない」ではなく、なんらかの事情により「働けない」ということ条件です。
働く意思はあっても、病気やケガなどが原因で働くことができないということですね。
生活保護条件3:他に利用できる公的制度がない
生活保護を申請する前に他に利用できる公的制度がある場合は、まずそちらを優先的に利用する必要があります。
他の公的制度とは、公的年金制度や雇用保険の給付金などが該当します。
生活保護条件4:親族からの支援が受けられない
これは、自分に親族がいる場合、生活保護の支援を受けられないということではありません。
自分の子どもなど親族の中で、生活を支援できる人がいる場合は、支援を受けましょうということです。
家族がいても支援するのが難しい場合は、支援が受けられないと認定されます。
他に親族がいる場合は、生活保護の申請の段階で親族宛てに、支援ができるかどうかを確認するための書類が郵送されます。
親族が「支援が難しい」と回答した、または書類の返送がなかった場合も「支援が難しい」と判断されます。
親族に対して支援を強制することはありません。
生活保護で支給される保護費とは
生活保護の申請が認められると、さまざまな形で保護費を受け取ることができます。
生活保護で支給される保護費にはどのようなものがあるのか、また何を基準に保護費が計算されるのかについてご説明します。
生活保護で支給される保護の種類と内容
生活保護で支給される保護費には、以下のようなものがあります。
保護費1:生活扶助
生活扶助は、日常生活に必要な食費、被服費、光熱費などに対するお金です。
生計を共にする家族の中に高校生など育ちざかりのお子さんがいる場合は、少し多めに、逆に高齢者などの場合は少し低めに設定されています。
また寒い地域などでは、冬になると暖房費が必要です。
このようなケースにも対応ができるように「基準金額」以外の加算があります。
暖房費は、冬期加算として受けることができます。
加算に関しましては、保護費の計算方法の項目で詳しくご紹介します。
保護費2:住宅扶助
住宅扶助は賃貸住宅などの家賃の補助が受けられるものです。
定められた範囲内で、実費が支給されます。
保護費3:教育扶助
教育扶助は、義務教育に必要な学用品などを購入するために受けられる補助です。
定められた基準金額によって支給されます。
保護費4:医療扶助
医療補助は、病院にかかったときの費用が補助されます。
医療費は直接医療機関に支払われるため、窓口で本人が一時的に負担する必要はありません。
保護費5:介護扶助
介護扶助は、介護が必要な人がデイサービスなどの介護サービスを受けている場合、その費用が補助されるものです。
医療補助と同様にサービスを受けている介護施設に直接支払われるため、本人が負担する必要はありません。
保護費6:出産扶助
出産扶助は、出産費用の補助が受けられるもので、定められた範囲内で実費の支給を受けることができます。
ただし病気や出産などで病院にかかる場合は、事前に福祉事務局に連絡する必要があります。
保護費7:生業扶助
生業扶助は、就労に必要な技能などを習得するために必要な費用を補助してもらうものです。
定められた範囲内で、実費が支給されます。
保護費8:葬祭扶助
葬祭扶助については、「生活保護受給者が受けられる葬祭扶助制度とは」の項目で詳しく説明します。
保護費の計算方法
生活保護は、住んでいる場所、一緒に生計を立てている人の年齢、人数などによって基準金額が決まっています。
また、生活扶助の項目で少しご紹介したように、基準額以外の支援が必要な項目に対しては加算というものがあります。
加算には、「妊婦加算」「障碍者加算」「児童養育加算」「母子加算」「冬期加算」などがあります。
基準金額に必要な加算を加えた金額が、厚生労働大臣の定めた生活に必要な最低限の金額になります。
ただし、すべての人がこの金額が支給されるわけではありません。
この厚生労働大臣が定めた生活に必要な必要最低限の金額と比較し、就労による収入、年金や児童手当などの他の公的機関から受給できる収入を差し引いた差額が、生活保護費として支給されます。
基準金額から算出された生活に必要な最低金額 | |||||
就労や他の公的機関からの収入 | 生活保護費として支給される金額 | ||||
↑ | ↑ | ||||
差し引かれる金額 | 受け取れる金額 | ||||
お住まいの地域の等級や加算についての詳細は、厚生労働省のホームページで確認することができます。
厚生労働省ホームページ:https://www.mhlw.go.jp/
お住まいの地域の等級:https://www.mhlw.go.jp/content/kyuchi.3010.pdf
生活扶助基準額について:https://www.mhlw.go.jp/content/kijun.3010.pdf
生活保護の申請書類をもらうのが大変って本当?
生活保護は申請書類をもらうことが大変だ、という話を聞いたことがありませんか?
これは生活保護の申請を出す場合、事前相談をしなければいけないことが理由です。
事前相談では、仕事をすることは本当に不可能なのか、親族からの援助などを受けられる方法はないのか、資産や所有物を売却することはできないのかなどを質問されます。
その結果によっては、申請書類を受け取れないのです。
中にはかなり悪質な対応をされたという経験をした人もいます。
本来であれば、本当に生活に困り、生活保護の申請をしたい場合、役所がそれを拒否する権利はありません。
生活するのが難しいという内容を、はっきり証明できるものなどを持参して相談するようにしてみてください。
生活保護の申請方法
生活保護の申請をするための流れについてご紹介します。
生活保護の申請を行うためには、はじめにお住まいの管轄の『福祉事務所』の生活保護の担当課に行きましょう。
事前相談
福祉事務所では、生活保護を申請する前に事前相談を行います。
生活保護制度についての説明や生活福祉資金(低所得者や高齢者に対して貸付を行う制度)、社会保障などについて説明があります。
その上で生活保護が必要だと判断された場合は、生活保護の申請をします。
生活保護を申請する際にはいくつか必要な書類がありますので、あらかじめ準備をしておくとスムーズに手続きすることができます。
ただし、申請する人の現在の状況によって必要な書類が変わります。
相談をしたときに必要な書類を確認しておきましょう。
・生活保護の申請書・申告書
・運転免許証などの本人確認書類
・健康保険証
・印鑑
・通帳
・年金手帳
・保険などに加入している場合は保険証書
・直近3か月分の給与明細
・診断書
・離職票
など
これらは現在の収入や財産などを証明するために必要な書類です。
該当しないものは持参する必要がない場合がありますので、担当者に確認するようにしてくださいね。
保護申請後に行われる調査とは
生活保護の申請が受け付けられると、その後いろいろな調査が始まります。
はじめに、福祉事務所の担当者による生活状況の調査(自宅訪問)があります。
部屋の間取りや部屋の中にある家具・家電などの確認が行われます。
このときに、貴金属品、高級家具などがあった場合は、売却を求められることがあります。
ただし、引き出しや棚などを全部開けて、家探し(やさがし)のようなことをされるわけではないので、安心してください。
その他にも、扶養調査(親族などで援助が可能な人はいないか)、借金やローンは残っていないか、本当に仕事をすることができないのか、生活保護以外の公的制度は利用できないかなどの調査があります。
これらの調査が終わると、受給についての審査が行われ、申請後14日以内(最長でも30日以内)に受給可否の連絡があります。
仮に受給が認められなかった場合は、不服を申し立てることができます。
生活保護受給者が受けられる葬祭扶助制度とは
葬祭扶助制度とは、葬儀に必要な費用を補助してもらうことができるものです。
葬儀費用を捻出することができない場合に、定められた範囲内で実費が支給されるものです。
ただし故人が生活保護の受給者であったとしても、遺族に葬儀費用をまかなえるだけの収入や資産がある場合は、この制度を使うことはできません。
生活保護が認められず困ったときは?
現在では、生活困難な人の数が増加しているため、生活保護の受給に対する審査が厳しくなっています。
そのため、本当に生活に困窮しているにもかかわらず、生活保護の申請書類すら受け取ることができなかったり、担当の職員から心無い対応を受けたりするケースも増えています。
生活保護の申請ができた場合でも却下されてしまい、生活保護が認められないこともあります。
生活保護は、生活に困窮している人が生きていくために作られた制度です。
生活保護がなければ生きていくことが困難な場合は、諦めずに弁護士会などに相談してみましょう。
日本弁護士連合会(日弁連)では、日弁連が委託する法律援助事業による支援があり、原則として、弁護士費用がかからないようになっています。
日本弁護士会に相談すると、弁護士があなたに代わって福祉事務所に生活保護申請をしたり、必要な場合は審査請求の手続きをしてもらうことができます。
生活保護の申請が却下されてしまった、生活保護の申請をさせてもらえなかった場合は、日本弁護士連合会に連絡してみてください。
まとめ
事情により生活が困窮してしまった場合、生活保護を受けて自立ができるように努力することは決して恥ずかしいことではありません。
「健康で文化的な生活」は、人として生き抜くために与えられた人としての権利です
とはいえ、生活保護の受給者が年々増えているため、申請が厳しくなっているというのが現状です。
生活保護の条件や申請が却下されてしまったときの対応法についてご紹介しましたので、困ったときは参考にしてみてください。