時短勤務とは-法律の内容を再確認
2019年4月から働き方改革関連法が施行されますね。
これによって、労働者が自分のライフスタイルに合わせた働き方を、選択しやすくなることが期待されています。
時短勤務も、そんな働き方の一つです。
ですが今までの慣習などで、同じ会社の人に時短勤務を理解してもらえないというケースが考えられます。
そこで不当な扱いかどうか判断できるように、
- 時短勤務とは何か
- 時短勤務に関する法律とは
についてお伝えしていきますね。
時短勤務とは
「時短勤務」とは文字通り勤務時間を短縮して勤務することをいいます。
子育てなどしている人は、定時時間になる前にお迎えの時間に帰ることができるようになれば働きやすくなりますね。
時短勤務は、単純に1日の労働時間を短縮して働くだけではなくいくつかの形態があります。
まずはどんな形態があり、またどんな時短勤務が可能なのかそれぞれの働き方についてご紹介します。
時短勤務の形態
時短勤務の形態には、次のようなものがあります。
- 1.労働時間の短縮
- 2.フレックスタイム制(代替措置)
- 3.勤務開始時間をずらす(代替措置)
一つずつ簡単に紹介しますね。
時短勤務の形態1:労働時間の短縮
時短勤務の方法の1つとして、定時時刻よりも早く退社して1日の勤務時間を短縮するケースです。
一般的に『時短勤務』といわれると、このスタイルを想像する人が多いのではないでしょうか。
幼稚園・保育園に通っているお子さんを持つ母親の場合は、お迎えに行く必要がありますね。
そんなママにとって、お迎えの時間などにあわせて早退できれば、安心して働くことが可能になります。
小さな子供を持つママは、時間に制限があるため、パートという形態での勤務を余儀なくされていた人も多いと思います。
ですが正社員の時短勤務が認められるようになれば、お仕事を探すときの職種の幅を広げることも可能になりますね。
なお時短勤務とは別に、勤務時間を限定した限定正社員という働き方もあります。
希望に合う条件の企業を探すのは難しいですが、これから仕事を探す人は検討してみてください。
■限定正社員の制度とは-給与や待遇など正社員と何が違うのか
また出社時間を遅くすることで、時短勤務をすることも可能です。
たとえば子どもを保育園や幼稚園に預けにいくと、始業時刻に間に合わないといったことがありますね。
そんなときでも、ゆっくり出社することが可能になりますね。
時短勤務の形態2:フレックスタイム制(代替措置)
『フレックスタイム制』とは、労働者が出社時刻、退社時刻、勤務時間などを自由に決めることが可能な働き方のことをいいます。
ただし、一か月間で、決められた勤務時間以上になるように調整する必要があります。
また一般的には、コアタイムという、必ず出社していなければいけない時間帯が設定されています。
フレックスタイム制は、企業で短時間勤務をおこなえない場合の代替措置となります。
ですが毎日の予定に合わせて、勤務時間を調整できるのは、子どもを持つママにとっても、有利ですね。
時短勤務の形態3:勤務開始時間をずらす(代替措置)
勤務開始時間を早めたり、遅らせることで勤務時間をずらします。
朝早く出社して、早い時間で帰宅することで、子どもの迎えにいくことができます。
ただ朝も育児が必要な状況では、あまり有効的な対応ではないですね。
企業で短時間勤務をおこなえない場合の代替措置となります。
時短勤務に関わる法律
育児や介護は、すでに法律で『時短勤務』は認められています。
ですが自分には関係ないと思っている人は、法律の内容を知らないものです。
給与計算などをしている総務担当でさえ、法律の内容をしっかり把握していないこともあり得るんです。
そのような背景から、差別や嫌がらせなどにつながってしまうこともあります。
そう考えるとちょっと怖いですね。
少なくても自分だけは、自信を持って説明できるようになっておきたいですね。
そこでまずは時短勤務に関わる法律にはどのようなものがあり、どのような内容が定められているのかについてご紹介します。
育児・介護法とは?
『育児・介護法』とは、育児・介護と仕事の両立のために、
- 業務(量)の制限
- 休業
- 就業時間の短縮
などが可能になるように、さまざまな決まり・法律を定めたものです。
また労働者が両立しやすい環境を整えることで、
- 子どもの出生率の低下を防ぐ
- 労働者数の減少を防ぐ
という目的もあります。
以前は、『仕事』か『育児』か、『仕事』か『介護』か、の二者択一を迫られ、泣く泣く仕事を諦めている人がほとんどでした。
ですが最近は『ライフワークバランス』という言葉が浸透してきたことからもわかるように、『仕事か家族か』という考え方ではなく、『仕事も家族も両方』とう考えになってきました。
そのための環境を整えることの必要性も、ようやく認められるようになってきたのです。
育児に関する対する時短勤務の法律
育児についての時短勤務は、次の二つの法律で定められています。
(所定労働時間の短縮措置等)
第二十三条 事業主は、その雇用する労働者のうち、その三歳に満たない子を養育する労働者であって育児休業をしていないもの(一日の所定労働時間が短い労働者として厚生労働省令で定めるものを除く。)に関して、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の申出に基づき所定労働時間を短縮することにより当該労働者が就業しつつ当該子を養育することを容易にするための措置(以下この条及び第二十四条第一項第三号において「育児のための所定労働時間の短縮措置」という。)を講じ(*)なければならない。
※措置を講じるとは、企業で制度化していること(就業規則で規定される等)
第七十四条 法第二十三条第一項に規定する育児のための所定労働時間の短縮措置は、一日の所定労働時間を原則として六時間とする措置を含むものとしなければならない。
※法律施行規則とは、法律の内容を各省が具体的に定めたものです。
つまり法律では、
と定められているんですね。
育児時短勤務の条件
育児で時短勤務をするには、三歳未満までという条件の他に次のものがあります。
- 1.一日の勤務時間が6時間以上
- 2.継続して一年以上勤務
- 3.一週間に3日以上出勤
- 4.仕事の性質上時短勤務が難しくない
この条件には無期雇用などの雇用形態についての条件がないので、パートでも時短勤務できることになっています。
ただ6時間以下で働いていた人には適用されないので、フルタイムパートということも条件になりそうですね。
条件の4について、どんなケースが時短勤務が難しいのか、次のような事例が挙げられています。
■事業主が講ずべき措置に関する指針(平成21年厚生労働省告示第509号)第2の9より
- 1.国際路線などの客室乗務員など
- 2.仕事の量に対して非常に従業員が少ない
- 3.流れ作業や交替制勤務で短時間勤務が難しい
- 4.個人にしかできない仕事を割り振られている
挙げられているには、企業が改善すべき問題点。
その問題点を理由として、時短勤務を拒否するのは、少し違う気がしますが…
中小企業などは、なかなかすぐには改善できない問題なので、仕方ないのかもしれませんね。
育児で時短勤務できないときの代替措置
時短勤務が難しい場合、育児・介護法23条の2項で、
と定められています。
その他といっても何でもいいということではなくて、法律施行規則74条の2項で内容は決められていています。
- フレックスタイム制
- 労働時間はそのままで始業又は終業の時刻を変更する
- 保育施設などを用意する
の3つのうちの、どれかを行わないといけません。
また残業についても、希望があれば免除されることになっています。
- 3歳までは会社で決められた勤務時間以上勤務しなくていい(16条の8:所定外労働の制限)
- 小学生になるまでは1か月で24時間、一年で150時間以上の時間外労働はしなくていい(17条:時間外労働の制限)
- 小学生になるまでは深夜(午後10時から午前5時まで)に勤務しなくていい(19条:深夜業の制限)
※時間外労働とは、一日8時間を超えた分の労働時間のこと
ただこちらも、
ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
という文章が書かれていて、『無理ならいいよ』というスタンスですね…
勤めている会社によっては、残業をしないといけないケースもありそうです。
なお時短勤務の条件として『継続して一年以上勤務』があることから、実質的には産休・育休後に時短勤務することになると思います。
これからという方は、こちらの記事を一度チェックしてみてくださいね。
■パート勤務の産休・育休取得について
3歳までなんて、働くママから見たら、全く実態を見ていないと感じますよね。
とりあえず法律で決めましたよ、というポーズでしかないようにも感じます。
実は小学校就学の始期、つまり小学生になるまでは、企業は時短勤務などをおこなうよう努力しなさいと決められています。(24条1項)
努力しなさいなんですよね…
実際に努力するかどうかは企業次第なんですね…
介護に関する対する時短勤務の法律
介護の時短勤務は、育児・介護法では次のように決められています。
(所定労働時間の短縮措置等)
第二十三条 3 事業主は、その雇用する労働者のうち、その要介護状態にある対象家族を介護する労働者であって介護休業をしていないものに関して、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の申出に基づく連続する三年の期間以上の期間における所定労働時間の短縮その他の当該労働者が就業しつつその要介護状態にある対象家族を介護することを容易にするための措置(以下この条及び第二十四条第二項において「介護のための所定労働時間の短縮等の措置」という。)を講じなければならない。
育児では企業が時短勤務の措置がとれない場合、他の方法を選択することができました。
ですが介護の場合は、時短勤務以外の方法でもよいことになっています。
具体的には、次の4つからの選択になります。
- 1.時短勤務
- 2.フレックスタイム制
- 3.労働時間はそのままで始業又は終業の時刻を変更する
- 4.介護サービスなどの費用を助成
(施行規則74条の3)
労働者の状況に合わせて選択できるので、柔軟な決まりに見えますが…
企業がどれか一つ選択すればいいことになっています…
いちおう、次のように厚生労働省のパンフレットには書かれていますが…
労働者の求めの都度これに応じた措置を講ずることまで義務づけられているわけではありませんが、可能な限り労働者の選択肢を広げるよう工夫することが望まれます。
『望まれます』
なんとも頼りないというか、企業に責任を丸投げしている気がしますね。
介護の時短勤務は柔軟にすべき
事業主が講ずべき措置に関する指針(平成21年厚生労働省告示第509号)第2の10で、時短勤務は労働者にとって実質的に介護が楽になるものであることが望ましいと書かれています。
毎日早く帰宅する必要がないケースもあるので、状況に合わせて柔軟に時短できた方がいいですよね。
ただこちらも、
『望ましい』
なので、企業次第なんですね。
介護で時短勤務できる期間は3年
介護での時短勤務は、少なくても通算3年以上取得することができます。
また回数について、次のように決められています。
第七十四条3 法第二十三条第三項の介護のための所定労働時間の短縮等の措置は、二回以上の利用をすることができる措置とし、次の各号に掲げるいずれかの方法により講じなければならない。ただし、第三号の方法により介護のための所定労働時間の短縮等の措置を講ずる場合には、二回以上の利用ができることを要しない。
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則
表現が難しいですが…
『二回以上』の主旨は、
3年の間に中断した場合、少なくとも一回は再開できます。
というものです。
途中で介護休業を取得して、復帰後に時短勤務をするなどを想定しているようです。
また企業の制度として、労働者が3年以上時短勤務をとれる状況に、なっていなければいけません。
たとえば、
というように、企業が1回の期間を決めてはいけないのです。
介護での残業制限
介護が必要な場合、残業についても、希望があれば免除されることになっています。
- 所定外労働の免除(16条の9:所定外労働の制限)
- 1か月で24時間、一年で150時間以上の時間外労働の免除(18条:時間外労働の制限)
- 深夜勤務(午後10時から午前5時まで)の免除(20条:深夜業の制限)
※所定外労働とは、就業規則などで決められた労働時間をこえた時間のこと
※時間外労働とは、一日8時間または週40時間を超えた分の労働時間のこと
残業が免除される期間は、1か月以上1年以内(深夜勤務は6か月以内)ですが、何回でも申請していいことになっています。
そのため時短勤務と異なり、3年以上継続することができます。
法律は状況に合わせて改正が行われるので最新情報を確認しておこう
労働に関する法律には「育児・介護法」などの他にも労働基準法などがあります。
これらの法律は一度施行されると内容が変わらないというものではありません。
世の中の環境の変化や、労働者の労働環境に適応するために、内容が追加されたり、変更されるといった改正が行われています。
せっかく時代に合うような法律があるにもかかわらず、「知らない」というだけで必要な権利をうまく使えないというのはもったいないですね。
法律の条文だけを読んでしまいますと、内容が理解しにくいものもありますが、「育児・介護ガイドブック」のように比較的内容を分かりやすく説明したパンフレットの内容をパソコンなどで読むこともできます。
このような制度を上手に利用するために、最新の情報をしっかり確認するようにしてみてくださいね。
会社独自のルールで時短勤務が可能なケースも!
今までは育児や介護に関する時短勤務の法律についてご紹介してきました。
それ以外にも特に女性職員が多い職場の場合は、会社独自のルールで時短勤務ができる会社もたくさんあります。
自分が勤務している会社にはどんな制度があるのかについて、就業規則を確認したり、総務の人に確認してみましょう。
自分が知らなかっただけで、実はこのような制度を採用していたということがあるかもしれませんよ。
まとめ
今回は、時短勤務に関する法律についてご紹介しました。
昔とは違い核家族化が進んでいるので、子どもを預けるところがなくて仕事を諦めてしまう人も増えていますね。
また、医療が発展したことで寿命が延び、高齢化も進んでいます。
その一方で、保育施設や介護施設などは不足していて、家庭の負担も増加しているように感じます。
子どもがいるから、介護をしなければいけないからといった理由で仕事を諦めていた人は、このような法律の内容をよく確認して、自分が利用できる制度をうまく活用して育児や介護と仕事の両立をしてみてくださいね。