限定正社員の制度とは-給与や待遇など正社員と何が違うのか

最近になって限定正社員という言葉を、耳にするようになりましたね。
求人などで、限定正社員募集と書かれていて戸惑ってしまう人も多いようです。
たとえば、こんな感じですね。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
求人ボックスより
そこでこの記事では、
- 限定正社員とは何か?
- 給与や待遇など正社員と何が違うのか?
ということについて、お伝えしていきます。
限定正社員とは
限定正社員とは、勤務地・仕事内容・勤務時間などを限定して働く正社員のことをいいます。
通常の正社員の場合、会社からの命令は雇用者側の理由で基本的には断ることができません。
そのため、遠方に転勤するように辞令がおりることもありますし、自分が苦手な業務をしなくてはいけないこともあります。
そんなときは、契約社員やパート・アルバイト、つまり非正規雇用者として働かなければいけなかったんですね。
ですが限定社員という制度により、正規雇用者でも、勤務地や仕事内容、勤務時間などを限定して働くことができるようになったんです。
限定正社員のメリット
限定正社員のメリットには以下のようなことがあります。
- 1.家庭の事情などで転勤などが難しい人も正社員として働くことができる。
地域限定正社員になれば、勤務場所を限定されるので、転勤がありません。
- 2.福利厚生など正社員と同じ待遇を受けることができる。
一部限定されていることがあります。
- 3.1つの業務内容について突き詰めてスキルを上げることができる。
職種内容が限定されている場合、仕事内容が変更されてしまうことがない。
- 4.会社は優秀な人材を確保することができる。
専門的な知識があるが、育児などで短時間パートをしていた主婦など、能力がある人を採用できる。
メリットだけをみると、限定正社員は良いことばかりのように感じますね。
雇用される側のメリットはもちろんですが、優秀な人材を逃がさずに確保できるという点については、雇用する側に対しても大きなメリットになります。
でも、限定正社員にはデメリットもあるんです。
では次に限定正社員のデメリットについてご紹介します。
限定正社員のデメリット
限定正社員のデメリットには以下のようなことがあります。
- 1.昇給などの際に正社員と「差」がついてしまうことがある。
- 2.限られた時間の中で業務をこなさなければいけないため、仕事の締め切りまでの余裕がないことがある。
- 3.事業縮小などにより契約で定めた勤務地がなくなってしまった場合、解雇になる可能性がある
- 4.業務範囲を限定している場合、新しい仕事をする機会がないのでスキルアップに制限が出てしまう
昇給などについての条件は会社によって異なるので一概にはいえませんが、正社員との差別化のため、差が出ることが多いです。
事業縮小などで勤務地が突然閉鎖されてしまった場合、解雇になる可能性があります。
この場合の解雇について、厚生労働省は配置転換などで、解雇をしないように求めています。
ですが、元々転勤ができないから限定社員になった人は、辞めるしかないのが現状ですよね…
限定正社員ができた経緯とは
限定正社員という制度ができた背景には、非正規労働者の人数の増加があります。
2014年の非正規労働者の雇用者数は、1990年のときと比較すると約2倍に増えています。
反対に正規雇用者数は、1998年頃を境に年々減少しています。
その背景として、配偶者のいる女性の場合は、
「自分の都合のよい時間に働きたい」
「家事・育児・介護と両立したい」
「通勤時間が短い方がいい」
といった理由で、自らの希望でパートなどの非正規雇用で働く人が増えていることが挙げられます。
こういった背景がある反面、企業側では
「優秀な人材を確保したい」
「従業員の定着を図りたい」
そのためにはどのようにしたらよいのか?
ということを、考えるようになってきたのです。
そのため、国も働き方改革の一環として、
『パートか?正社員か?』
という両極端な選択ではなく、もっと柔軟に働ける枠組み作りを行ってきました。
その結果働き方を限定することで、いろいろなタイプ、つまり『多様な正社員』という選択肢ができたのです。
厚生労働省では、『勤務地などを限定した「多様な正社員」の円滑な導入・運用に向けて』というパンフレットで、雇用管理の上で留意する内容や企業での活用事例を公開し、「限定正社員」の普及を図っています。
一度確認してみくださいね。
■勤務地などを限定した「多様な正社員」の円滑な導入・運用に向けて|厚生労働省
限定正社員の給与は正社員とどう違う?
限定正社員と正社員の給与には、どのような違いがあるのでしょうか?
簡単にお伝えしますね。
正社員と限定正社員の給与の「差」
限定正社員の給与は、制度を導入している企業によって異なります。
たとえば地域限定社員の場合…
企業の考え方で、給与が変わってくるんです。
ただ一般的には、限定正社員の給与は正社員の8~9割に設定しているケースが多いようです。
限定正社員として応募する場合や、正社員から限定正社員への変更を希望する場合は、雇用条件を確認しておくようにしてくださいね。
昇給や昇進などの『差』が給料の『差』につながることも
正社員と限定正社員の基本給には差がなかった場合でも『昇給』や『昇進』などに関して、条件に差がある場合があります。
正社員と限定正社員の給与や待遇を同じ条件にしてしまうと、正社員から不満が出てしまいます。
そのため社員を一定の条件のもとに区分して等級を作り、等級ごとに昇給率や昇給額を設定します。
そして限定正社員に対しては上げられる等級の限度を正社員よりも低く設定することで、正社員と限定正社員の給与に「差」をつけたりすることができるというものです。
こちらも企業によって待遇が違うので、昇給や昇進の条件などに差がないか確認しておくことも大切ですね。
限定正社員制度に対する社員の不満とは?
限定正社員は、メリットもあるけれどデメリットもある制度。
当然不満が出てきます。
さらに、正社員からも限定正社員に対しての不満があるようです。
ここでは、『平成30年版 労働経済の分析〈要約版〉第3章』
(https://www.jil.go.jp/press/documents/20180911.pdf)
から、どんな点が不満なのか抜き出してみます。
- 1.正社員と限定正社員では合理的な賃金差がない
- 2.労働時間と比較して、業務量が増加した
- 3.正社員と限定正社員を比較したときに、昇進のスピードに「差」があまりない
- 4.限定正社員への仕事の割り振りや仕事の調整が難しい
- 5.計画的な休暇の取得がしづらくなった
- 1.不合理な賃金差がある
- 2.正社員と共有できていない情報が多い
- 3.限定正社員の場合、正社員に比べて昇進のスピードに不合理さを感じる
- 4.労働時間と比較して、業務量が多い
- 5.短時間しか労働できない中、業務の締め切りまでに十分な時間を確保できない仕事を依頼されることが多い
正社員は合理的な賃金差がない。
限定正社員は不合理な賃金差がある。
お互いの主張がかみ合わないことからも、企業によって待遇が異なることがわかりますね。
あなたが限定社員として働いたとしたて、これらの不満を持つことになるかどうかは、勤める企業次第としかいえないようです。
限定正社員制度は不満がないと回答した人が多い
実は同じ調査結果の内容をみると、不満がある人よりも
『限定正社員制度について不満がない』
と答えた人の割合のほうが、多かったという結果も出ています。
この図は、相手の働き方・待遇を見て、自分の待遇に不満がある人の割合です。
正社員は19.7%だったのに対して、限定正社員の人の割合は33.7%ですね。
この結果を見ると、正社員の多くが今の待遇の方がよいと感じているのに対して、限定社員の3分の一が待遇改善を望んでいるようです。
限定社員制度は課題が多い
正社員と限定正社員の待遇に差をつけないと、正社員の不満が増える。
逆に差が大きすぎると、限定正社員の不満が増える。
会社の業務内容や業務量などによっても、適切な待遇差が違います。
どこまでの仕事を限定正社員に依頼するのか?
どこまでの「差」をつければいいのか?
会社の中で最適な条件を整えるために、改善しなければならないこともあるでしょう。
それらの課題をクリアするために、今の待遇も今後変わっていくかもしれませんね。
無期契約社員と限定正社員の違いとは
『契約社員』とは、雇用期間を決めて働く人を指します。
パートも契約社員に含まれます。
しかし労働基準法が改正され、期限のない『無期雇用』に転換できるルールが制定されました。
1.更新を重ねて通算5年を超えた場合、会社に対して「無期契約」への変更の申し入れが可能になった
2.従業員から無期契約の申し出があった場合、会社は受け入れなければならない
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■パートの無期雇用と解雇の可能性とは
雇用期間が決まっている契約社員も、法律の改正によって無期契約で働くことができるようになったんですね。
そうなると、
- 働く時間が限定
- 働く場所が限定
- 雇用期間は無期
という点では、無期契約社員と限定正社員の待遇は同じです。
では無期契約社員と限定正社員の違いとは、何なのでしょうか?
無期契約社員と限定正社員の違いは、正社員で『あるか・ないか』ということです。
無期契約社員は勤務期間に期限はなくなりましたが、正社員ではありません。
ですが限定正社員は、限定はあっても正社員として雇用されています。
ただし無期契約社員も限定正社員も『一般の正社員』とは、待遇や職務内容に異なる点があります。
どんな違いがあるかについては、企業によって異なるので契約内容などを確認するようにしてくださいね。
まとめ
いかがでしたか?
限定正社員について、お伝えしてきました。
時代の変化とともに、企業の考え方は変化しています。
それに伴い、雇用される側が自分のライフスタイルにあった働き方が選択できる時代になってきています。
その反面、制度の確立だけが先行してしまい、改善が必要な点もたくさんあります。
「限定正社員」という制度は、雇用する側にとっても、雇用される側にとってもメリットがたくさんあります。
ですがデメリットもあるので、雇用条件をしっかり把握した上で働くかどうか判断しているてくださいね。