試用期間とは?クビになることはあるのか?

「試用期間って何だろう?」
会社の求人広告などに『試用期間あり』と書いてあったり
面接のときに『試用期間があります』といわれたり
そんなケースが、時々ありますね。
『試用』とは、文字のとおり『試しに用いる(使う)こと』という意味ですね。
だから、
そんな心配をしてしまいます。
でもそれは、間違った認識です。
「試用期間」を正しく理解していれば、不当な解雇(つまりクビですね)を事前に防ぐことも可能です。
そこで、今回は「試用期間」について詳しくご紹介します。正しいしくみを理解し、試用期間だからクビになってもしょうがないという誤った認識をなくして不当解雇から自分を守りましょう!
試用期間とは
試用期間とは、一般的に企業が採用した従業員にたいして、次のことを確認する期間です。
勤務態度やスキルなどをチェックする期間。
お試しっていうと主婦の感覚だと『試供品』みたいなイメージがありますね。
だから
と思っている人も多いですね。
たしかに、試用期間というのは会社側が、採用した人に適正があるかを判断する期間です。
ですが、簡単にクビにできる期間という意味ではないんです。
なぜなら、試用期間というのは本来、次のような意味があるからです
つまり、『会社に合わなかったら辞めさせる』ということではないんですね。
だったら、
って思いますよね。
今は昔とは違いスピードが重視されるようになりました。
面接が終わったら、すぐに採用の可否を決めなければならないことも多いです。
その人はどんな人なのか?
本当に依頼した仕事をこなす能力があるのか?
よくわから状態で、決めないといけないんですね。
昔でいうなら、お見合いをして相手のことがよくわからないまま結婚するようなものです。
そのため適正を確認するために、試用期間を設けている会社が多いんですね。
試用期間の期限は法律で決まってる?
実は法律(労働基準法)では、試用期間についての決まりはほとんどないです。
ですが、とりあえず関係のありそうなものを抜き出してみます。
第二十一条 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。
一 日日雇い入れられる者
二 二箇月以内の期間を定めて使用される者
三 季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者
四 試の使用期間中の者
前条の規定とは、解雇予告についての規定です。
解雇予告って何?と思った方は、こちらの記事をチェックしてみてくださいね。
■パートで解雇!?クビと言われたとき確認するべきこと
この第二十一条は、試用期間についてだけではないので、試用期間に絞って抜き出して意訳してみると…
2週間以内なら解雇予告しなくていいと書いてあるだけで、試用期間は何日までという内容ではないんですね。
この条文の他には、
『会社の平均賃金の計算には、試用期間中の従業員の給与をいれてはいけない』(第十二条意訳)
という内容ぐらいしかありません。
つまり法律的には、試用期間について、ほとんど決められていないんです。
もちろん、『試用期間は最長で何日まで』という決まりもありません。
■一般的に試用期間は何日ぐらい?
試用期間に法律的な決まりはありませんが、法律には暗黙の了解として『常識的な範囲』『公序良俗に反しない(民法 第90条)』というルールがあります。
そのため極端に長い期間は、試用期間として認められないこともあるんです。
実際に試用期間を一年以上にしていた企業にたいして、「いつまでたっても安定した生活ができない」という判決がでたことがあるようです。
そこで、次のような期間が一般的です。
1か月から3カ月
長くて6か月程度
会社は試用期間中でも実は簡単にクビにすることはできない
前の項目で、
ということは、ないと書きました。
ただ実際には、従業員の無知に付け込んで、何の理由もなくクビにしてしまう企業もあります。
これは違法です。
なぜなら会社と労働者は、正式に労働契約が結ばれているからなんです。
労働契約(雇用契約)については、こちらの記事で紹介しているのでチェックしてみてくださいね。
■パートで採用されたのに雇用契約書がもらえないのは違法か?
正式な契約を結んでいる以上、正当な理由もなく簡単に契約解除をすることはできないのです。
入社2週間以内であればクビになる可能性はある?
「入社2週間以内であれば会社は従業員をクビにできる」
だからクビになる可能性がある。
こんな話を聞いたことがある人もいるはずです。
この情報は、実は間違った情報です。
試用期間についての法律を紹介したときに、2週間以内なら解雇通告をしなくていいと書きました。
この情報から、
という話になってしまったんですね。
通常、会社が従業員を解雇する場合、30日以上前に解雇通告をしなければならないということが労働基準法で定められています。
これは、『解雇通告をすれば、何の理由もなく従業員を辞めされられることができる』という意味ではありません。
正当な理由があって、その上で解雇通告をしなさいということなんです。
入社2週間以内でも同じです。
解雇するには、正当な理由が必要なんです。
労働基準法に定められた不当な理由による解雇とは
では従業員を解雇できる、正当な理由とはなんでしょうか?
その前に、不当な理由から紹介しますね。
労働基準法で定められている解雇をするときの不当な理由には次のようなものがあります
- 1.会社で希望している仕事ができるようにならない
- 2.なんとなく合わない(明確な理由がない)
- 3.給料分の働きをしていない
- 4.反論してきた
- 5.ケガをして仕事ができなくなった
- 6.妊娠して仕事ができなくなった
仕事の覚えが悪いことでクビになることはあるの?
上記の項目の中に
「会社で希望している仕事ができるようにならない」
「給料分の働きをしていない」
というものがあります。
この場合、会社側がやるべきことは、次のことです。
- 指導方法を変える
- 適性のある部署に異動してもらう
などなど
仕事ができないからという理由で、解雇はできないんです。
試用期間に解雇ができる正当な理由
では会社が従業員を解雇ができる、正当な理由にはどのようなものがあるのでしょうか。
- 1.極端な能力不足
- 2.勤務態度が悪い
- 3.勤怠不良
- 4.履歴書などの重大な詐称や隠ぺい
1.極端な能力不足
前項で、仕事ができないということは、正当な理由にならないという説明をしました。
だからここで、極端な能力不足を挙げるのは、少しおかしく感じるかもしれませね。
「極端な能力不足が解雇の正当な理由になる」というのは正確にいうと、正当な理由になる可能性があるということです。
仕事が覚えられない従業員に対して、
・指導方法を変える
・能力が発揮できそうな部署に異動する
・仕事が覚えられるように十分なサポートをする
など、『会社側ができる限りの対応をしても改善されなかった』ということが、対外的に判断された場合に正当な理由になりうるということなのです。
2.勤務態度が悪い
勤務態度が、
・周りに悪影響を及ばす
・会社に不利益を与えている
と判断された場合、正当な理由として判断されることがあります。
3.勤怠不良
勤怠不良とは、無断で欠勤や遅刻などを繰り返すなどです。
このようなケースであっても、会社が指導などを行わずにいきなり解雇宣告した場合は、会社の主張が認められないこともあります。
4.履歴書などの重大な詐称や隠ぺい
履歴書の詐欺や隠ぺいとは、学歴や職歴に嘘があったり、会社の不利益になる情報を故意に隠ぺいしていた場合などです。
あいまいな表現なのはなぜ?
説明をしていると、「認められないことがある」「正当な理由になりうる」というあいまいな表現になってしまうことにお気づきでしょうか?
その理由は、不当解雇取り消しの裁判を起こした場合に、以前同じ内容の裁判があったとしても、その時々で裁判官の判断が変わってしまうからです。
試用期間中であっても解雇するときは正社員と同じ手順が必要
会社側が正当な理由が提示できるなら、会社は従業員に解雇を宣告できます。
この場合、正社員であっても、試用期間中であっても同じ手順で手続きをする必要があります。
では、会社が従業員を解雇させる場合、どのような手順を取らなければならないのでしょうか。
会社は従業員を解雇する場合は、30日以上前に解雇予告をしなければいけないという決まりがあります。
ただし、この記事の『試用期間の期限は法律で決まってる?』で紹介した通り、勤務を始めてから2週間以内なら、解雇予告は必要ありません。
この部分だけは、正社員と違うところですね。
試用期間中に辞めたいときはどうすればいいか
試用期間中に、
と思うことありますよね。
そして早いうちに辞めて、別の仕事を探したいと感じるかもしれません。
では従業員が試用期間中に辞めたい場合は、どのようにすればいいのでしょうか。
試用期間内でも就業規則にのっとった手順を踏む
試用期間中であっても会社と従業員は雇用契約が成立しているという話をしました。
そのため従業員側も、労働基準法または会社の就業規則にのっとり、退職の手順を踏む必要があります。
労働基準法では、従業員が退職する場合は退職する2週間前に会社に申し出なければならないという決まりがあります。
ただし、会社の就業規則によっては、退職する1か月前に申し出ることが決まっている場合もあります。
入社してすぐに自分には合わないと判断して退職を希望する場合は、2週間前でも認められる可能性もありますので、まずは自分の直属の上司に相談することをおすすめします。
まとめ
会社の試用期間というと試用期間内であれば会社側が適性のない人を解雇することができるものという認識があった人もいるのではないでしょうか。でも、たとえ試用期間内であったとしても会社が従業員をクビにするためには、正当な理由が必要で、状況によっては同じ理由でも正当な理由だと判断されないこともあるということがおわかりいただけたと思います。
この記事でご紹介のように、会社が従業員をクビにするということは実はそんなに簡単なことではないんですね。たとえ試用期間中であったとしても、正当な理由もなく従業員をクビにすることはできないですし、仮に解雇されたとしても解雇理由が不当だと思った場合は、裁判で争ったときに会社が敗訴することもあります。
このようなケースがあるため、会社は従業員をクビにすることに対してとても慎重に対応をしていることが多いんですね。
従業員が試用期間中に辞めたいと思ったときも同様で、たとえ試用期間であったとしても正式に雇用契約が結ばれているので労働基準法または就業規則にのっとり、最低でも2週間前には会社に退職の意思を伝えなければいけないことになっています。合わないから今すぐ辞めたいというのは厳密にいうと法律違反になるんですね。
労働基準法の解雇についての内容を正しく理解して、不当な理由による解雇から自分を守りましょう。