ビジネスシーンの敬語 正しい使い方を再確認しよう

ビジネスシーンでは、相手に合わせた正しい敬語を使う必要があります。
敬語を使う場面は、会話だけではありません。
他にも電話、メール、ビジネス文書などそれぞれに合った敬語を使う必要があります。
少し難しいなと感じてしまいますね。
そこで、今回は間違いやすい敬語についてご紹介します。
目上の人や年上の人に対して使うと失礼になる敬語
ビジネスで普段何気なく使っている敬語の中に、目下の人が目上の人に対して使うと失礼になるものがあります。
その主なものを挙げてみますね。
目上の人に対して失礼になる敬語1
×「ご苦労様です」
○「お疲れ様です」
「です」をつけて使うことが多いので、どちらも正しいと思っている人が多いようです。
「ご苦労様」というのは、目上の人が目下の人に対して労いを表すときに使う言葉です。
目上の人に対しては、「お疲れ様です」が正しい敬語です。
また「お疲れ様です」は、相手の労をねぎらうという意味があります。
たとえば、他の人より先に帰るときに、「お先に失礼します」という言葉に対して「お疲れ様でした」という使い方が正しいということになります。
ビジネスシーンでは挨拶のように使われる言葉ですが、朝いちばんで使う言葉としてはふさわしくないという考え方の人もいますので、使い方には注意してくださいね。
目上の人に対して失礼になる敬語2
×「了解しました」
○「承知いたしました」
ビジネスシーンで「了解しました」は、よく使われる言葉です。
この言葉の意味は、「物事の内容を理解しました」で、相手を敬うという意味は含まれていません。
つまり、目上の人に対して使うのは間違いなんですね。
「物事を理解した」という言葉は、話し言葉だけではなくメールなどでも使うことがあります。
この場合も目上の人に対して使う場合は、「承知いたしました」を使うのが正しいです。
「わかりました」という意味で使う場合は、「承知いたしました」の他に「かしこまりました」でもOKです。
目上の人に対して失礼になる敬語3
×「確認しました」「確認いたしました」
○「拝見しました」「拝見いたしました」
「確認」という言葉は、見て確かめたという意味はありますが、敬語ではありません。
上司や目上の人に対して使う場合は、「拝見しました」「拝見いたしました」を使うようにしましょう。
目上の人に対して失礼になる敬語4
×「すみません」「すみませんでした」
○「申し訳ございません」「申し訳ございませんでした」
ビジネスで謝る意思などを相手に伝えるときに「すみません」や「すみませんでした」という言葉を使う人がいます。
「すみません」というのは話し言葉なので、会話の中で使う言葉です。
ビジネスメールなどで使う言葉ではない、ということをまず覚えておいてください。
謝罪の意味で「すみません」を使う場合は、「申し訳ございません」や「申し訳ございませんでした」を使うようにしましょう。
また「すみません、あいにくこの商品は在庫を切らしております」のように、相手に話しかけるような使い方をする場合は、「恐れ入ります」という言葉を使うようにしましょう。
目上の人に対して失礼になる敬語5
×「なるほどですね」
○「おっしゃるとおりですね」
この言葉は、人によってはつい会話の中で使ってしまいがちです。
ですが目上の方やお客様は、ちょっと上から目線で話をされている気分になってしまいます。
この場合は、「おっしゃるとおりですね」や「おっしゃるとおりだと思います」という使い方がスマートです。
間違いやすい接客用語
接客もビジネスシーンの一つです。
接客で何気なく使われている言葉の中にも、間違った敬語の使い方をしていることがあります。
ここでも、その主なものを挙げてみますね。
接客で失礼になる敬語1
×「〇〇円からお預かりします」
○「〇〇円お預かりします」
レジでおつりをもらう金額を支払ったときに、「〇〇円からお預かりします」といわれた経験がある人もいると思います。
実はこの言葉の使い方は間違っています。
「から」と「預かる」をセットで使うのは、「田中様からメッセージをお預かりしております」のように、誰かから何かを預かったときです。
レジでお客様からおつりになる金額を預かったときは、「〇〇円お預かりします」が正しい使い方です。
接客で失礼になる敬語2
×「ちょうどお預かりします」
○「〇〇円、ちょうどいただきます」
「お預かりします」という使い方は正しいです。
でも、預かるという言葉は、返す必要があるときに使う言葉です。
ちょうどもらっているのであれば、返す必要がないということですね。
この場合は、「〇〇円、ちょうどいただきます」というのが正しい使い方です。
接客で失礼になる敬語3
×「~になります」
○「~でございます」
これも使っている人が多い言葉ですね。
たとえば「レストランは、つきあたりになります」のような使い方です。
この場合は「レストランは、つきあたりでございます」が正しい敬語の使い方です。
以前、飲食店などで頼んだ料理がきたときに「ハンバーグになります」といわれることがありますが、これも「ハンバーグでございます」というのが正しい使い方ですね。
接客で失礼になる敬語4
×「よろしかったでしょうか」
○「よろしいでしょうか」
この使い方もよく聞きますね。
でも、今聞かれているのに過去形を使うのはおかしいです。
正しい使い方は、「よろしいでしょうか」です。
お客様に確認をするときは現在形の言葉を使うようにしましょう。
接客で失礼になる敬語5
×「どちらにいたしますか」
○「どちらになさいますか」
「いたす」という言葉は「する」という言葉の謙譲語です。
謙譲語というのは、自分のことをへりくだっていうときに使う言葉ですね。
つまり「いたす」は、自分の行動を表す言葉なので、相手の行動に対しての敬語ではありません。
「する」の尊敬語は「なさる」です。
この場合は、「どちらになさいますか」が正解になります。
電話対応で注意が必要な敬語
ビジネスでの電話対応は、個人の電話ではないので敬語で対応する必要があります。接客など直接お客様が見えないので、丁寧な対応をしようとしすぎてしまいますと、敬語が多用されすぎてしまい、結局何を言っているのかわからないなんていうことにもなりかねません。
では、ビジネスシーンの電話対応のときに注意が必要な敬語にはどのようなものがあるのでしょうか。
電話で失礼になる敬語1
×「もしもし」
○「はい。〇〇株式会社でございます」
ビジネスの電話の対応では「もしもし」という言葉は使いません。
一般的には、「はい。〇〇株式会社でございます」や「お電話ありがとうございます。〇〇株式会社でございます」になります。
ただし電話の最初の挨拶の言葉は、会社のマニュアルで支社名や自分の名前まで名乗ることが決められていることがあります。
会社のマニュアルを確認するようにしてくださいね。
電話で失礼になる敬語2
×「すこしお待ちください」
○「少々お待ちください」
電話を取り次ぐときや何かを確認するためにお客様をお待たせするときに「お待ちください」という言葉を伝えるときがあります。
ビジネスで相手を待たせるときは、「少々お待ちください」や「少々お待ちくださいませ」といった言葉を使うようにしましょう。
これは、電話だけではなく会社を訪問してきた人を待たせるときも同様です。
電話で失礼になる敬語3
×「お名前(お電話番号)を頂戴できますか」
○「お名前を伺ってもよろしいでしょうか」
相手の人に名前や電話番号を聞きたいときに「頂戴できますか」という言い方をすることがあります。
ですが、「頂戴する」は、相手から何かをもらったときに使う敬語です。
名前や電話番号は相手からもらうことはできませんね。この場合は、「お名前を伺ってもよろしいでしょうか」が正しい使い方です。
この言葉を使うときは、「恐れ入りますが」というクッション言葉をつけて「恐れ入りますが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか」とすると、より印象がよくなりますよ。
相手の声が聞き取りづらいときや、何を言われたかわからなかったときは、「恐れ入りますが、お電話が少々遠いようなので、もう一度お名前を伺ってもよろしいでしょうか」といった聞き方をすると、相手の方に失礼なくもう一度聞き返すことができます。
電話で失礼になる敬語4
×「〇〇はおやすみをいただいております」
○「〇〇は休みを取っております」
電話を取り次ぐ社内の人が休暇を取っている場合、「〇〇はおやすみをいただいております」という使い方をしている人がいます。
実は、この使い方も間違っているんですね。
「誰からおやすみをいただいるのか?」と考えるとわかりやすいですね。
休みをくれた相手は、電話の相手ではなく会社です。
この場合の正しい敬語は、「本日、田中は休みを取っております」や「田中は休暇で不在にしております」になります。
ビジネスメールやビジネス文書で注意が必要な敬語
電話や会話(口頭)でお客様や取引先の人と話をする場合は、1つの文章にいくつかの敬語を重ねて使うことがあります。
記事の冒頭でご紹介した「お名前を伺ってもよろしいでしょうか」のような使い方です。
ですが、ビジネスメールやビジネス文章の場合、1つの文章で2つ以上の敬語を重ねて使うことはマナー違反になることがあります。
一般的によく使われている言葉であればそれほど気にする必要はありません。
しかし過剰に敬語を使いすぎるとマナー違反になることがあるということは覚えておいてくださいね。
二重敬語の例
二重敬語とは、前の項目でご紹介した1つの文章に2つ以上の敬語を使うことをいいます。
たとえば、「伺わせていただきます」という言葉には、
・「行く」という言葉の謙譲語の「伺う」
・「(させて)もらう」という謙譲語の「いただく」
という2つの敬語が重なっています。
この場合であれば「伺います」でOKということです。
このように普段何気なく使っている言葉の中には、二重敬語になっていることがあります。
「ご覧になられる」という言葉の場合も「見る」の尊敬語と「なる」の尊敬語は2つ入っていますね。
「ご覧になる」が正しいですね。
宛名も二重になりやすい(二重敬称)
宛名などで「様」や「御中」などを名前につけますよね。
ですが気づかないうちに敬称を二重でつけていることがあるんです。
二重で敬称をつけるのは、正しい使い方ではありません。
パターンとしては、あまり多くないので、この機会に覚えてしまってください。
間違った宛名例1
「役職名+様」
郵便などの宛名でついやってしまいがちなのが、役職名のあとに「様」をつけてしまうことです。
「二重敬語」同様、ひとりの名前に対してつける敬称は1つというのがマナーです。
「様」は敬称だと認識している人は多いと思いますが、「役職名」も実は敬称の1つなんですね。
「田中課長」あての宛名を書く場合は、「営業部 課長 田中 様」もしくは「営業部 田中課長」になります。
余談ですが、「殿」も敬称の1つです。
しかし、これは目上の人が目下の人に使う名称です。
目下の人が目上の人に対して使ってしまうと失礼にあたるので覚えておくといいですよ。
間違った宛名例2
「会社名(部署名)御中+個人名 様」
郵便は基本的には個人宛に出すものです。
しかし、ビジネスで郵便物を送る場合は、会社あてや部署あてに送ることがありますね。
「御中」は、〇〇会社のみなさまや営業部のみなさまという意味で使われます。
つまり、会社名の後ろに御中を入れて、さらに田中様のように個人名に様をつけてしまうと、敬称が二重になってしまいます。
さらに、営業部の皆様と田中様あての郵便物ですよという意味になってしまうのです。
宛名が会社名や個人名で終わるときは「御中」を使い、宛名に個人名があるときは、会社名や部署名のあとに「御中」は使わずに、名前の後ろに「様」をつけるようにしましょう。
間違った宛名例3
「各位+皆様」
ビジネス文書で使われる宛名に「各位」という言葉があります。
関係者各位という使い方をすることが多いですね。
この「各位」という言葉も「御中」と同じで「みなさま」という意味があります。
「関係者各位のみなさま」とすると「皆様」が二重になってしまうんですね。
つまり使い方が間違っているということです。
郵便物のあて名には「御中」を使い、メールやビジネス文書で複数の人に連絡する場合は「各位」を使うと覚えておくといいですよ。
「お名前を伺ってもよろしいでしょうか」は二重敬語ではないのか?
電話対応の項目で「お名前を伺ってもよろしいでしょうか」という言葉を紹介しました。
実は、この言葉には「お名前」「伺う」「よろしいでしょうか」という3つの敬語が使われています。
直接お客様や取引先の人と対応する場合「名前を伺ってもよろしいですか」でもいいのですが、「お名前を伺ってもよろしいでしょうか」という使い方が一般的です。
このように話し言葉の場合は、より丁寧な使い方として敬語を重ねることがあります。
しかしメールやビジネス文書の場合は、過剰に敬語を重ねた使い方は避けた方が無難です。
特に目上の人にメールや手紙などを出す場合は、マナーに厳しい方もいるので注意してくださいね。
まとめ
何気なく正しい敬語だと思って使っていた言葉の中には、間違った使い方をしているものがたくさんあります。
特に、目下の人が目上の人に対して使ってしまうと失礼になってしまうものがあるので、使い方には注意する必要があります。
正しい敬語の使い方をマスターして、スマートに敬語を使いこなしてみてくださいね。
またビジネスでのマナーに関する次の記事も、一度チェックしてみてくださいね。
■電話対応のビジネスマナーと困った時の対処法